第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

アップデートシンポジウム5

「口腔顔面領域の疼痛とそれに伴う皮質内の可塑性・神経変性」

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:50 B会場 (123講義室(本館2F))

座長:豊田 博紀(阪大 院歯 口腔生理)、山本 清文(日大 歯 薬理)

14:42 〜 15:04

[US5-02] 島皮質神経回路の機能調節を担うニコチン性受容体の役割

〇豊田 博紀1 (1. 阪大 院歯 口腔生理)

キーワード:島皮質、シナプス可塑性、ニコチン性受容体

島皮質は,知覚,自己認識,認知機能,運動制御,および薬物依存に関連する重要な脳領域であり,ニコチン性アセチル受容体が豊富に発現している.ニコチン性アセチル受容体は,神経回路の発達,薬物中毒,認知機能,注意,学習,記憶,および動機付けなどの行動において重要な役割を果たしていることから,島皮質では,ニコチン性アセチル受容体の活性化による局所神経回路の動作調節が,様々な機能の遂行に関与しているものと考えられる.したがって,島皮質においてニコチン性アセチルコリン受容体の活性化より,どのように局所神経回路が調節されるかを理解することが重要である. 我々は島皮質第III層および第V層錐体細胞において誘導されるシナプス長期増強が,α4β2型受容体を介して抑制される一方,島皮質第VI層錐体細胞において誘導されるシナプス長期増強が,α4β2型受容体を介して促進されることを見出した.また,島皮質第V層錐体細胞において誘導されるシナプス長期抑制が,α4β2型受容体を介して促進されることを見出した.そして,島皮質第V層錐体細胞で見られるα4β2型受容体の活性化によるシナプス長期増強の抑制が,α4β2型受容体とドーパミンD1受容体の相互作用により生じることを明らかにした.さらには,青年期にニコチン暴露を施したマウスでは,興奮性シナプス伝達および長期増強が増大していることを明らかにした. これらの成果は島皮質における局所神経回路の動作機構を理解するうえで重要な知見であり,島皮質が関わる高次機能を理解するうえで一助となる可能性が示唆される.
【利益相反】著者は利益相反がないことを宣言する.