一般社団法人日本学校保健学会第67回学術大会

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シンポジウム5
次世代につなげる歯科保健教育

コーディネーター:森田一三(日本赤十字豊田看護大学)

[SY5-1] 児童が行う口腔の健康のための生活習慣自己評価票「お口の花まるチェックシート」の開発

柴田博子1, 吉田彩乃2, 森田一三3 (1.愛知県西尾保健所, 2.現愛知県半田保健所 元愛知県西尾保健所, 3.日本赤十字豊田看護大学)

キーワード:歯科保健 生活習慣 セルフチェック

はじめに
 愛知県西尾保健所管内における乳幼児期・学齢期のう蝕有病者率は,県平均に比べ高い状況にある.特に西尾市では小学校6年生のう蝕有病者率が32.4%(平成29年度)と県平均の16.5%の約2倍であり,県内市町村の中で最も高い状況にある.愛知県では平成25 年から「愛知県歯科口腔保健基本計画」において,“12歳児のう蝕のない者の増加”を目標に掲げて推進している.児童の生活習慣や食生活への対応を行うことは,有効なう蝕罹患対策である.これまでに岐阜県多治見市では児童・生徒の口腔内の状況と生活習慣の情報から歯の健康にかかわる生活習慣セルフチェック票を作成している.そこでう蝕有病率の高い西尾市において,独自に児童自身が確認する口腔の健康のための生活習慣自己評価方法(セルフチェック票)の開発を行った.

対象及び方法
 歯科保健行動に関する質問25項目,生活習慣に関する質問25項目,合計50項目の質問紙調査を実施し,その結果と学校歯科検診結果の歯垢,歯肉,う蝕罹患経験ごとの点数の最大値が20点となるよう得点を配分し,それらを基に「お口の花まるチェックシート」としてセルフチェック票を作成した.

歯科保健行動および生活習慣の調査と口腔の健康との関連の解析
 本研究に参加した愛知県西尾保健所管内の小学校6校の平成31年度3,4,5年生児童数は合計1,507人で,そのうち研究に参加することに保護者の同意が得られた者は1,384人(91.8%)であった.また,同意が得られた者のうち,歯科保健行動および生活習慣の調査の有効回答者は98.7%であり,学校歯科検診から歯垢,歯肉,う蝕罹患経験の情報が得られた者は98.0%であった.
 歯垢の状態・歯肉の状態・う蝕罹患経験のいずれかとの間で有意に関連がみられた歯科保健行動は「朝ごはんは食べますか」「口が大きく開けられますか」「朝ごはん後,歯を磨きますか」を含む10項目であった.
 また,同様に歯垢の状態・歯肉の状態・う蝕罹患経験のいずれかとの間で有意に関連がみられた生活習慣の項目は「朝起きる時間は決まっていますか」「学校に行く前にテレビや動画を見ますか」「学校や児童グラブから,家に帰る時間は決まっていますか」「忘れ物をよくしますか」の4項目であった.
 
歯科保健行動および生活習慣の点数化によるセルフチェック票の作成
 有意な関連がみられた歯科保健行動および生活習慣の項目を説明変数とし,歯垢・歯肉・う蝕罹患経験を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.
 歯垢,歯肉,う蝕罹患経験ごとの点数の最大値が20点となるように,歯科保健行動および生活習慣の項目ごとの偏回帰係数の大きさに比例して得点を配分した.それらを基に「お口の花まるチェックシート」としてセルフチェック票の作成を行った.歯垢,歯肉,う蝕罹患経験に関わる生活習慣の三つの点数をレーダーチャートで表す形式とし,より大きな三角形がよい状況を示すように可視化した.口腔の健康状態を表す表現として,歯垢の状況を“歯のせいけつ度”,歯肉の状況を“歯ぐきのけんこう度”,う蝕罹患経験を“歯のけんこう度”とし,児童が分かりやすい表現とした.セルフチェック票裏面には得点が加算されない歯科保健行動および生活習慣の項目の確認や改善目標を書く欄等を取り入れた.

まとめ
 地域の学校関係者の協力を得て,「お口の花まるチェックシート」を作成した.今後,学校で活用され,児童の生活習慣や食習慣が改善することでう蝕のない者の増加につなげて行きたい.