The 68th Annual Meeting of the Japanese Association of School Health

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一般演題(口演)

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O-1~O-6 健康管理、ヘルスプロモーション

座長:黒川 修行(宮城教育大学)

[O-6] 見落とされやすい難病「遺伝性血管性浮腫」に対する学校保健の役割

山本 ベバリーアン1, 田中 暁生2, 薬師寺 泰匡3, 本田 大介4 (1.大阪大学大学院 人間科学研究科, 2.広島大学大学院 医系科学研究科 皮膚科学, 3.薬師寺慈恵病院, 4.千葉大学医学部付属病院 腎臓内科)

Keywords:浮腫(むくみ)、腹痛、窒息

【目的】学童が原因不明の腹痛を繰り返す、あるいは顔やからだ、手足がむくむ疾患に「遺伝性血管性浮腫(HAE)」という疾患がある。学校保健従事者の認知度向上のため、文献レビューを行う。ひとりでも多くの未診断のHAEの学童が早期診断されることを目指す。【方法】学校保健室でHAEと考えられる症状を呈する学童に出会った際に行うべきことや、すでに診断された学童への対応方法について実際のHAEの患者を提示しながら、疾患や症状の特徴などについてまとめる。【結果】HAEは、C1インヒビターという免疫に関与するタンパク質の遺伝子変異によってC1インヒビターの欠損あるいは機能不全をきたし、さまざまな部位に浮腫(むくみ)を起こす。かゆみのない皮膚の浮腫や腹痛(腸管浮腫)、窒息(喉頭浮腫)などが主な症状である。有病率は50,000人に1人で、症状は発作的に起こり、無治療でも数日間で回復するが、反復的に症状の出現と回復を繰り返すことを特徴とする。身体的・精神的ストレスによって発作が誘発されることがある。日本の人口推計ではおよそ2,500人の患者が存在するはずであるが、疾患認知度が低いことから500人程度しか診断されていない。およそ80%の患者が20歳までに何らかの初発症状を呈する。【結論】未診断の状態で原因不明の皮膚の浮腫、腹痛、窒息を呈しても適切な治療をなされていない学童が多く存在していると考えられる。学校保健室でこれらの症状を繰り返す学童に遭遇する可能性が高く、学校保健従事者が認知しておくべき疾患である。