一般社団法人日本学校保健学会第68回学術大会

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シンポジウム1
人生100年時代を見据えた生活習慣の形成

2022年11月5日(土) 09:35 〜 11:05 LIVE配信第1会場

座長:川畑 徹朗(神戸大学)

[SY1-1] 児童生徒のインターネット利用・依存傾向と健康問題-生まれたころからインターネット社会という視点から―

戸部 秀之 (埼玉大学教育学部)

キーワード:インターネット利用、インターネット依存傾向、児童生徒の健康リスク

はじめに
 ソサエティ5.0の社会においては、インターネットはこれまで以上に社会の基盤となり、インターネットの有効利用によって人々の生活はますます便利に、そして豊かになると言われている。意識する、しないに関わらず、幼少期から多くの人々がインターネットを利用しているが、忘れてはならないのはインターネットの利用には「光」と「影」があることである。人生100年時代の健康の基礎をつくる発育発達期のインターネット利用において、光を輝かせるとともに影をいかに抑制していくのかを、同時にかつ真剣に考えていく必要がある。ここでは、既に児童生徒の健康問題として表面化しているインターネット依存傾向を軸に、筆者が関わってきた調査データを紹介しながら、次の視点から考えていきたい。

幼少期の子供にインターネットを使わせる保護者の意識
 幼児から小学校3年生の子供を持つ保護者の調査から、多くの家庭で子供に幼少期からICT機器を使わせていることが分かる。その目的、内容、保護者の心配と実感についてのデータから、その後の子供のインターネット利用の土台が幼少期に築かれている可能性、及び、すでにこの時期に保護者が子供の利用を制御できなくなりつつある可能性を指摘したい。それが、次に述べる学齢期以降のさまざまな健康リスクの芽生えになっているかも知れない。

インターネット利用・依存傾向と児童生徒が自覚する多様な健康リスク
 インターネット利用を通して、児童生徒は重大な問題に発展しうる多様な健康リスクを体験・自覚していることを紹介する。具体的には、生活習慣の悪化、人間関係の希薄化、犯罪被害の可能性、不適切な情報への接触、具体的な健康障害、事故、学業への問題、心の問題、ネットいじめや人間関係上のトラブルなどである。また、インターネット依存傾向が高い者ではリスクの体験率がきわめて高いこと、コミュニケーション、衝動のコントロール、モラル、攻撃衝動といった、重要な心の機能とインターネット依存傾向が強く関連することを紹介する。

一層進展するインターネット社会に向けて(学校保健の視点から)
 これらの状況を踏まえ、ソサエティ5.0の一層進展するインターネット社会に向けて、次のことの重要性を改めて強調したい。「児童生徒のインターネット利用の実態について理解を深めること」、「インターネット依存傾向に着目して多様な問題発生を予防すること」、「発達段階に応じたルールづくりや親子での話し合いを推進すること」、「生徒の意識・実態を踏まえた集団・個別の保健教育につなげること」が重要であると思われる。

文 献
1)埼玉県学校保健会「子供のインターネット利用と健康に関する調査報告書」(平成29年3月)https://www.pref.saitama.lg.jp/f2211/it-houkoku.html
2)横浜市学校保健審議会ゲーム障害に関する部会「横浜市立小中学校児童生徒に対するゲーム障害・インターネット依存に関する実態調査報告書」(令和3年11月)https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kosodatekyoiku/kyoiku/sesaku/hoken/default2022012.files/0001_20211118.pdf