[SY2-3] 運動部活動指導者におけるスポーツ関連脳震盪の知識と対策の状況 高等学校運動部活動指導者へのパイロット調査
Keywords:頭部外傷、運動部活動、インターネット調査
はじめに
重症頭部外傷の代表例である急性硬膜下血腫の発生数とスポーツ関連脳振盪(以下,SRC)の発生率とに関連があることが示されており,SRCの発生を抑制することはスポーツ活動の安全性を高めるために重要である.本研究の目的は高等学校の運動部活動指導者を対象にSRCの知識と対策の実施状況をインターネット調査にて把握することであった.
対象者,調査項目,統計解析
本研究ではインターネット調査会社(株式会社マクロミル)に登録されたアンケートモニター206名より回答を得た.調査項目は,1)基本的属性に関する項目,2)指導種目に関する項目,3)SRCの知識および学習経験,4)SRCの対策状況および対策実施の障壁であった.統計解析では,上記4つの項目を記述統計にてまとめた.またSRCの対策実施数と知識および学習経験との関連性を検討した.
結果と考察
1)対象者の8割以上が男性であり,年齢では55-59歳が,居住地域では関東地方が,所属学校では公立学校が最も多かった.
2)指導種目はコンタクトスポーツとノンコンタクトスポーツが半数ずつであった.指導歴については1-5年と回答した対象者が最も多かった.
3)-1. 対象者の半数以上がふらつき,意識消失,頭痛というSRCの症状を正しく認識していたが,覚えられない,疲れる・やる気が出ない,眠れない/寝つけない,いつもよりイライラするとう症状の認識率は3割未満であった.認識率の低い症状はSRCの教育・啓発において確実に受講者に伝達されたい項目であると考える.
3)-2. 回答頻度が最も高かった学習媒体は,教員・部活動指導者向け研修会であり,最も低い学習媒体は自ら参加の講習会であった.SRCを含めスポーツ医学に関する情報は,教育関連団体から運部活動指導者に発信されることが効率よく伝達される要素と考えられた.
4)-1. SRCが疑われた場合のプレーの中止と受傷当日の競技復帰の禁止という対策は実施率が最も高かった.一方で,SRCからの時間をかけた段階的な競技復帰,SRCに関する生徒への教育という対策の実施率は低かった.
4)-2. SRCの対策の実施を阻害する要因として,知識や情報がない,生徒の同意を得られない,保護者の同意を得られないが挙げられた.部活動指導者,生徒および保護者のSRCについての理解を高めると共にこれらの関係者がSRCについて対話する機会を設ける必要性が示唆された.
5)SRCの対策実施数には,学習媒体数,指導者自身の競技経験,性別,SRCの症状の正答数が関連した.より多くの学習機会を設け,知識を有している対象者ほど,SRCの対策実施数が多くなっており,部活動指導者に対する教育プログラムの提供が重要だと考えられた.また,部活動指導者自身の競技経験は,生徒の安全確保の観点からも重要であることが示唆された.一方で,競技経験のない部活動顧問教員に対する安全研修会の開催や部活動指導員・外部指導者を活用した複数名による部活動指導体制の促進が重要だと考えられた
重症頭部外傷の代表例である急性硬膜下血腫の発生数とスポーツ関連脳振盪(以下,SRC)の発生率とに関連があることが示されており,SRCの発生を抑制することはスポーツ活動の安全性を高めるために重要である.本研究の目的は高等学校の運動部活動指導者を対象にSRCの知識と対策の実施状況をインターネット調査にて把握することであった.
対象者,調査項目,統計解析
本研究ではインターネット調査会社(株式会社マクロミル)に登録されたアンケートモニター206名より回答を得た.調査項目は,1)基本的属性に関する項目,2)指導種目に関する項目,3)SRCの知識および学習経験,4)SRCの対策状況および対策実施の障壁であった.統計解析では,上記4つの項目を記述統計にてまとめた.またSRCの対策実施数と知識および学習経験との関連性を検討した.
結果と考察
1)対象者の8割以上が男性であり,年齢では55-59歳が,居住地域では関東地方が,所属学校では公立学校が最も多かった.
2)指導種目はコンタクトスポーツとノンコンタクトスポーツが半数ずつであった.指導歴については1-5年と回答した対象者が最も多かった.
3)-1. 対象者の半数以上がふらつき,意識消失,頭痛というSRCの症状を正しく認識していたが,覚えられない,疲れる・やる気が出ない,眠れない/寝つけない,いつもよりイライラするとう症状の認識率は3割未満であった.認識率の低い症状はSRCの教育・啓発において確実に受講者に伝達されたい項目であると考える.
3)-2. 回答頻度が最も高かった学習媒体は,教員・部活動指導者向け研修会であり,最も低い学習媒体は自ら参加の講習会であった.SRCを含めスポーツ医学に関する情報は,教育関連団体から運部活動指導者に発信されることが効率よく伝達される要素と考えられた.
4)-1. SRCが疑われた場合のプレーの中止と受傷当日の競技復帰の禁止という対策は実施率が最も高かった.一方で,SRCからの時間をかけた段階的な競技復帰,SRCに関する生徒への教育という対策の実施率は低かった.
4)-2. SRCの対策の実施を阻害する要因として,知識や情報がない,生徒の同意を得られない,保護者の同意を得られないが挙げられた.部活動指導者,生徒および保護者のSRCについての理解を高めると共にこれらの関係者がSRCについて対話する機会を設ける必要性が示唆された.
5)SRCの対策実施数には,学習媒体数,指導者自身の競技経験,性別,SRCの症状の正答数が関連した.より多くの学習機会を設け,知識を有している対象者ほど,SRCの対策実施数が多くなっており,部活動指導者に対する教育プログラムの提供が重要だと考えられた.また,部活動指導者自身の競技経験は,生徒の安全確保の観点からも重要であることが示唆された.一方で,競技経験のない部活動顧問教員に対する安全研修会の開催や部活動指導員・外部指導者を活用した複数名による部活動指導体制の促進が重要だと考えられた