一般社団法人日本学校保健学会第68回学術大会

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課題別セッション4
子どもたちのヘルスリテラシー:関わる実態及び育成の方略

2022年11月6日(日) 14:40 〜 15:55 LIVE配信第1会場

コーディネーター:西岡 伸紀(兵庫教育大学大学院)

[TS4] 子どもたちのヘルスリテラシー:関わる実態及び育成の方略

西岡 伸紀 (兵庫教育大学大学院)

キーワード:情報源、信頼性評価、健康教育

【企画意図】
ヘルスリテラシーは,「健康や医療に関する情報を入手し,理解し,評価し活用する力」と定義される(中山,2016)。本セッションでは,ヘルスリテラシーの実態の一端として,(公財)日本学校保健会による「メディアリテラシーと健康行動に関する調査委員会」(以下,調査委員会)2020年調査結果のうち,インターネットによる健康関連情報の入手源,メディア情報を見る時の確認状況等を報告する。また,メディアリテラシー育成の健康教育の目標,内容,指導方法等について,日本の保健科教育及び米国健康教育基準を紹介する。以上も参照し,子どものヘルスリテラシー育成の方略について意見交換をお願いしたい。
【企画に関わる報告】
1)調査委員会2020年調査結果
44府県86高校の2年生8451人を対象とした同調査によれば,健康関連情報の入手先について,最多はインターネットであり,その際の利用サイトでは,「国や自治体などの公的サイト」や「医療機関」よりも,「まとめサイト」や「SNS」の方が多かった。同様の結果は,ダイエットやトレーニングに関する情報,美容に関する情報,性に関する情報の入手先についても認められた。
メディア情報を見る時の確認状況(「情報はいつ作られたものか」等10項目)については,回答結果を合計し「情報の信頼性評価得点」とした。得点が高いほど情報の信頼性は高頻度に評価される。信頼性評価得点は,それが高いほど,国や自治体などの公的サイト等の利用頻度はより高かった。また,バランスの良い食事に対する意識,性行動での妊娠の可能性への関心,性行動でエイズや性感染症にかかる可能性への関心のいずれも,より高かった。さらに,男女の飲酒経験,女子の喫煙,加熱式たばこ,電子たばこの各経験者では得点がより高かった。情報確認の指導の有効性が示唆された。
2)健康教育
日本の小中高の保健科教育では,知識等を日常生活や課題解決に活用することが強く求められている。例えば小学校体育科の目標にある「保健の見方・考え方を働かせて」について,「保健に関わる原則や概念を根拠としたり活用したりして,疾病等のリスクの軽減や生活の質の向上,さらには健康を支える環境づくりを目指して,情報選択や課題解決に主体的に取り組むことができるようにすることが必要」としている(中学校,高等学校も同様。下線部は筆者による)。
米国健康教育基準は,ヘルスリテラシー育成のための8基準について,学年段階別のパフォーマンス指標を示している(2006年に改訂)。本セッションと特に関わるの基準3については,「児童生徒は、健康を増進するために有効な情報や製品やサービスにアクセスする能力を示す」とあり,学年段階別に具体的指標が示されている。