国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

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2024年11月9日(土) 09:00 〜 13:00 メディアラウンジ (外濠校舎1階)(JASID) (外濠校舎1階 メディアラウンジ )

09:00 〜 13:00

[1Z101] パレスチナにおける紛争が農家の複合経営に及ぼす影響の定量的分析―農業復興と経営安定化に向けて

*中村 友紀1 (1. 日本工営株式会社)

キーワード:複合経営、農業復興、戦争、順序プロビットモデル、パレスチナ、西岸地区、ガザ地区

パレスチナのガザ地区では、イスラエルによる空爆や軍事侵攻が続き、西岸地区でも占領や軍事行動が行われている。現地では紛争に起因する様々な事象が発生し、これらがパレスチナ人農家に対して物理的、心理的な影響を及ぼしていると予想される。紛争地域での農業は予測できないリスクが多いため、多様な作目から成る複合経営は、農家のリスクヘッジおよび生計安定化に寄与すると考えられる。本研究の目的は、紛争に起因する事象が複合経営にどのような影響を及ぼしているかを定量的に明らかにし、農業復興と経営安定化に必要とされる技術支援に対する提言を行うことである。一般に、パレスチナの農業経営は穀物、野菜、果樹・オリーブ、畜産といった作目から構成され、複合経営とは、これら複数の作目を組み合わせた経営形態を指す。本研究では、2010年と2021年の農業センサスのマイクロデータ、両センサス実施時期の間に発生した戦闘、爆撃、民間人に対する暴力、抵抗運動、暴動の発生位置情報と発生件数のデータを用い、これら事象が農家の作目数に及ぼす影響を順序プロビットモデルで推計した。その結果、西岸地区では、イスラエル側が主体となる事象は作目数を減少させ、パレスチナ側が主体となる事象は作目数を増加させるという結果が得られた。双方が主体となる事象については影響がみられなかった。一方、ガザ地区では、西岸地区とほぼ同様の結果が得られたものの、イスラエルが行う爆撃については西岸地区と異なる結果となった。ガザ地区ではほとんどの村落で空爆が発生しており、一件ごとの被害規模が異なることから、それが複合経営に及ぼす影響の違いとなっている可能性がある。パレスチナの農業復興と安定的な農業経営に向けた提言として、作目を減少させる事象が発生した村落においては、複合経営を維持または促進するための技術支援が必要であると考えられる。

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