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[1Z102] 国連ベーシックインカムへの道――持続的平和構築アーキテクチャーへの普遍的無条件現金給付導入の論理
キーワード:平和構築、持続的平和、ベーシックインカム、SDGs、国際連合
国連諸機関(UNDP, ILO,世銀等)は、2021年以降、「全員個人向け、資産調査・行為要求なしの無条件、定期的現金給付」であるベーシックインカム(以下BI)政策の研究・啓蒙団体であるBI地球ネットワーク(BIEN)と連携してきた。2023年の国連『新たな平和への課題』の「行動提起4」は、紛争国での一定期間のBI導入、そのための国際金融機関の資金調達を推奨した。2025年の平和構築アーキテクチャーのレビューに向けて、ウクライナやパレスチナでBI試験実施の動きが続いている。1970年代のアフリカ飢餓問題に際してオランダの画家が全人類向けの国連所得を提起したが、半世紀後の国連は、未曾有の人類社会の危機に直面してその実現に動いているのだろうか。
国連及びBIENの公表資料、2024年8月末のBIEN大会でのインタビューと参与観察に基づき、岡野内(2021)等で提起した批判開発学の視点から分析する。また大原社会問題研究所「世界のBI運動」共同研究(2021~)の成果も用いる。
持続的平和構築を軸に国連がBI推進に動く要因として、次の三点が明らかになる。①すでに百を超える社会実験の結果、BIが勤労意欲に悪影響を及ぼすという常識的予測は完全に否定され、対象者全員の健康・尊厳の維持、経済・社会活動の活性化、SDGs達成効果が確認されている。②一国レベルBI導入を阻む財源問題は、国連が国際金融構造転換を掲げて主要諸国の合意を得てSDGs達成ファンドの形成に向けて動き出したこと、また平和構築支援対象地域の物価水準に応じて必要予算額が低いことによって克服できる。③一国政治レベルで導入障壁となる政治勢力間の人気取り競争は、国連が取り組む圧倒的な人道的危機の下での持続的な平和構築ではなく、最も効果的な手段が採用されやすい。①②③より、BI導入社会の実現には国連が大きな役割を果たす可能性がある。
岡野内正(2021)『グローバル・ベーシック・インカム構想の射程――批判開発学/SDGsとの対話』法律文化社.
国連及びBIENの公表資料、2024年8月末のBIEN大会でのインタビューと参与観察に基づき、岡野内(2021)等で提起した批判開発学の視点から分析する。また大原社会問題研究所「世界のBI運動」共同研究(2021~)の成果も用いる。
持続的平和構築を軸に国連がBI推進に動く要因として、次の三点が明らかになる。①すでに百を超える社会実験の結果、BIが勤労意欲に悪影響を及ぼすという常識的予測は完全に否定され、対象者全員の健康・尊厳の維持、経済・社会活動の活性化、SDGs達成効果が確認されている。②一国レベルBI導入を阻む財源問題は、国連が国際金融構造転換を掲げて主要諸国の合意を得てSDGs達成ファンドの形成に向けて動き出したこと、また平和構築支援対象地域の物価水準に応じて必要予算額が低いことによって克服できる。③一国政治レベルで導入障壁となる政治勢力間の人気取り競争は、国連が取り組む圧倒的な人道的危機の下での持続的な平和構築ではなく、最も効果的な手段が採用されやすい。①②③より、BI導入社会の実現には国連が大きな役割を果たす可能性がある。
岡野内正(2021)『グローバル・ベーシック・インカム構想の射程――批判開発学/SDGsとの対話』法律文化社.
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