国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

教育の不平等と地域差:制度改革とその影響

2024年11月10日(日) 12:45 〜 14:45 F303 (富士見坂校舎 303)

座長: 劉 靖(東北大学)

コメンテーター: 劉 靖(東北大学), 福西 隆弘(アジア経済研究所)

13:45 〜 14:15

[2C207] ケニアにおける教育改革と「教育熱」
-保護者と教員の認識をめぐって-

*山口 菜々果1 (1. 大阪大学大学院)

キーワード:ケニア、教育熱、教育改革、カリキュラム、学校教育制度

本研究の目的は、ケニアにおいて進行中の教育改革をめぐる保護者及び教員の認識を明らかにし、教育改革が人びとの「教育熱」に及ぼす影響について検討することである。リサーチクエスチョンは、①保護者・教員は教育改革に対してどのような認識を持っているのか、②教育改革は、保護者・教員の学校教育に対する期待(教育熱)にいかなる影響をもたらしているか、の2点とする。ケニアでは現在、教育制度の変更とカリキュラム改革(Competency-Based Curriculum: CBCの導入)が同時に実施されている。ところが、将来の見通しなく進められた改革は現場に多くの混乱を引き起こしている。特にCBC導入は、学校において設備、教員数・教員研修等の不足、家庭においては子どもの宿題への積極的関与や金銭的負担を生じさせ、教員や保護者への過大な負担が深刻となっている。現地の報道では、CBCへの不満を募らせた保護者が訴訟を引き起こした事例も挙げられている。また、教育制度の変更に伴う国家試験の廃止による教員・保護者への影響も懸念される。ケニアでは、国家試験で高得点を獲得させることが教員や保護者が持つ学校教育に対する期待(教育熱)に繋がっていた。しかし、一部の先行研究では、国家試験の廃止が教員のモチベーション低下を招いた事例も報告されており、制度変更による教育熱への影響は看過できない。これまでケニアの学校運営は、教員や保護者の教育熱に大きく支えられてきた。現在進行中の教育改革は、こうした教員・保護者の教育熱に「揺らぎ」を生じさせる事態であり、彼らの学校教育に対する認識をも変化させる可能性がある。そこで本研究は、教育改革のもとで教員・保護者が持つ学校教育に対する認識を明らかにし、教育改革が人々の「教育熱」に及ぼす影響についての考察を試みる。本発表は、2024年9月に約2週間実施する、初等学校での参与観察及び教員・保護者への半構造化インタビューにより収集したデータに基づき論じる。

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