国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

教育の不平等と地域差:制度改革とその影響

2024年11月10日(日) 12:45 〜 14:45 F303 (富士見坂校舎 303)

座長: 劉 靖(東北大学)

コメンテーター: 劉 靖(東北大学), 福西 隆弘(アジア経済研究所)

14:15 〜 14:45

[2C208] エチオピアの産業人材育成における協同訓練プログラムの課題と要因 ―職業技術教育・訓練機関(TVET機関)と受入企業の視点―

*島津 侑希1 (1. 愛知淑徳大学)

キーワード:産業人材育成、職業技術教育・訓練(TVET)、エチオピア、協同訓練

エチオピアの公的な職業技術教育・訓練機関(TVET機関)では、市場の需要に合った人材を育成するため「Cooperative Training(協同訓練)」と呼ばれるプログラムが実施されている。このプログラムでは、TVET機関での授業や訓練に加えて、近隣の受入企業で数週間から1カ月程度の実務訓練が行われる。しかし、複数の先行研究で、このプログラムの実施には多くの課題があると指摘されており、さらに、TVET機関ごとにプログラムの内容や学生の満足度が異なることが報告されている。本研究では、協同訓練の内容に影響を与える要因を、TVET機関側および受入企業側の双方の視点から明らかにすることを目的として、エチオピアの首都アディスアベバで、TVET機関の教員および受入企業のマネージャーに対する個別インタビューを行うとともに、企業内での学生の様子を観察した。その結果、複数の企業がTVET学生を「繁忙期に来る無料の手伝い」と見なし、TVET機関が期待する作業内容を行わせず、雑用をさせるのみで、最新機械の使用も禁じていた。また、学生の評価も学生自身に記入させたり、出欠確認しか行わないといった実態が明らかになった。一方、TVET学生のために訓練用のミシンを用意し、専用のトレーナーを配置するなど、非常に協力的な姿勢を示していた企業もあった。このような差が生まれる要因としては、受入企業のマネージャーが協同訓練をどの程度理解しているか、またTVET機関の教員がどの程度柔軟に対応できているかなどがあった。さらに、首都アディスアベバという地理的要因、ファストファッションが主流となっている産業構造、政府の「協同訓練の内容・計画はTVET機関と受入企業に一任する」という姿勢、同様の訓練プログラムを複数の団体が実施している現状、TVET機関が「落ちこぼれの受け皿」と見なされている社会、そしてTVET学生の性格や訓練中の態度も関係していることが明らかとなった。

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