国際開発学会第35回全国大会・人間の安全保障学会第14回年次大会

講演情報

一般口頭発表

信頼、健康、紛争:危機への社会経済的対応

2024年11月10日(日) 09:30 〜 11:30 F305 (富士見坂校舎 305)

座長: 新海 尚子(津田塾大学)

コメンテーター: 新海 尚子(津田塾大学), 稲場 雅紀(アフリカ日本協議会)

09:30 〜 10:00

[2E201] インドネシアにおける新型コロナワクチン忌避の分析:政府に対する信頼とワクチン接種率の相関関係

*東方 孝之1 (1. ジェトロ・アジア経済研究所)

キーワード:ワクチン忌避、新型コロナ感染症ワクチン、大統領選挙、インドネシア

本報告では、新型コロナ感染症ワクチン接種に対する忌避の要因のひとつとして、インドネシアを事例に、政府への信頼に焦点をあてた分析結果を紹介する。現在、新型コロナ感染症の拡大前とほとんど変わらない生活を送ることができている理由として、政府主導のもとで新型コロナ感染症ワクチンの接種が世界的に推進されたことが挙げられよう。ただし興味深いことに、このワクチン接種の推奨にあたっては、安全性や有効性が医学的な検証を経てきたことについて政府も国民への周知に努めていたが、それでも少なからぬ地域でワクチン接種に消極的な行動(忌避行動)が観察された。たとえばインドネシアは、東南アジアの他の国々に先駆けて新型コロナワクチン接種プログラムを開始したにもかかわらず、2022年末時点でその人口に占める完全接種率は近隣諸国を下回っている。ただしインドネシア国内でもワクチン接種率には大きな地域差があることを確認できる。
 こうしたワクチン忌避の要因については、たとえばMR(麻疹風疹混合)ワクチン接種などを事例とした研究の蓄積がみられるが、先行研究ではそのメカニズムの複雑さが指摘されている。本報告では、インドネシアでの地域ごとの政府への信頼度の違いに注目し、クロスセクション分析を通じてその新型コロナワクチン接種率との相関関係を探る。具体的には、パンデミック直前に実施されていた大統領選挙における得票率が地域ごとの政府に対する信頼度を反映しているとみなし、接種が開始された2021年1月から2022年11月にかけての地域(県・市)ごとの新型コロナワクチン接種率との間の相関関係を探っている。
 先行研究をもとに、接種率に何らかの影響を与えている可能性のある地域特性をコントロールしたうえで、その二つの変数の関係について分析を試みたところ、2021年9月から2022年3月までの期間のワクチン接種率と(当時の)現職大統領の得票率との間に統計的に有意な正の関係があることを確認した。この結果からは、政府への信頼の低さに伴うワクチン接種へのためらいが、接種率の上昇を大幅に遅らせていた可能性が示唆される。

パスワード認証
報告論文の閲覧にはパスワードが必要です。パスワードを入力して認証してください。

パスワード