第55回日本脈管学会総会

講演情報

JCAA選考発表

JCAA選考発表

2014年10月30日(木) 09:00 〜 10:40 第4会場 (203会議室)

座長: 大倉宏之(川崎医科大学 循環器内科), 遠藤將光(独立行政法人国立病院機構 金沢医療センター 心臓血管外科), 濱野公一(山口大学大学院 器官病態外科), 陣崎雅弘(慶應義塾大学医学部 放射線科学)

09:00 〜 10:40

[JCAA-5] ラット頸動脈内膜肥厚モデルに対するナノ粒子の集積と治療

谷口良輔1, 小山博之1, 木村賢1, 牧野能久1, 須原正光1, 根元洋光1, 白須拓郎1, 芳賀真1, 望月康晃1, 松倉満1, 赤井隆文1, 西山綾子1, 橋本拓弥1, 宮原拓也1, 保科克行1, 重松邦広1, 渡邉聡明1, 三浦裕2, 片岡一則2 (1.東京大学 血管外科, 2.東京大学 疾患生命工学センター 臨床医工学部門)

キーワード:intimal hyperplasia, nanomicelle

【背景・目的】内膜肥厚は粥状動脈硬化症の初期病変であるとともに,動脈疾患に対する血管内治療後の再狭窄やバイパス術後のグラフト狭窄の原因となる。本病態に対する薬物治療として,現在まで様々なストラテジーに基づく療法が試みられてきたが,未だ確立されたものは無い。我々は実験的内膜肥厚モデルを用いて,ナノ粒子の局所集積特性を明らかにし,更にはこれを応用した選択的薬物デリバリー治療の可能性について検討した。【方法】ラットの頸動脈擦過モデルを用いた。血中での安定性の高いミセル型ナノ粒子を蛍光標識し,全身投与後の病変への集積特性を蛍光強度で評価した。ナノ粒子の投与タイミングを擦過直後(内皮損傷のみで内膜肥厚は全くない状態)又は擦過後7日目(内膜肥厚が形成されている状態)とし,ナノ粒子直径を40,100又は200nmの3サイズとした。ここで得られた知見に基づき直径約50nmのエピルビシン含有ナノ粒子ミセルを頸動脈擦過後7日目から3回投与し,擦過後21日目に検体を摘出し組織学的評価を行った。【結果】頸動脈擦過直後に投与したナノ粒子は3サイズとも傷害血管に集積性を示したが,擦過後7日目では直径40nmのナノ粒子のみ集積し,他のサイズのナノ粒子は集積が明らかでなかった。エピルビシン含有ナノ粒子ミセル投与群はコントロール群と比べて有意に内膜肥厚が抑制された。【結論】内膜肥厚へのナノ粒子の集積はサイズ依存性を有し,これを応用したエピルビシンのデリバリー実験において内膜肥厚の抑制効果を得ることに成功した。今後は本研究を発展させて,動脈硬化巣を標的とした選択的薬物デリバリシステムの開発に繋げたいと考えている。