第55回日本脈管学会総会

講演情報

第6回JCACシンポジウム ~日本人における抗血栓療法NOW!!~

【総論】

2014年10月30日(木) 15:24 〜 16:07 第1会場 (ホール)

座長: 一色高明(帝京大学医学部 内科学講座), 下川宏明(東北大学大学院医学系研究科 循環器内科学分野)

第一三共株式会社

15:24 〜 16:07

[JCSY-2-1] 経口抗凝固薬Update

小嶋哲人 (名古屋大学大学院医学系研究科 病態解析学講座)

 ワルファリンは半世紀以上前から強力な抗凝固薬として血栓症の治療や予防に汎用されているが、出血性副作用が問題となっている。近年、経口可能な単一凝固因子を標的にした抗凝固薬が開発され、出血性副作用の少ないワルファリンに代わる経口抗凝固薬(Non-vitamin K antagonist oral anticoagulant: NOAC)として相次いで臨床現場へ導入されている。これらは、薬物代謝、排泄経路などの違いがあり、患者の身体状況や病態背景により投与量の調節(減量)が必要な場合があるものの、いずれも有効治療域が広く一定用量での使用が可能である。これらの経口抗凝固薬は、ワルファリンに比べPTやAPTTなどの汎用凝固検査への影響が少なく、これらを用量調節モニタリングには使用できないが、一定用量でも出血性副作用が少なくかつ有効な治療効果が得られる。また、ワルファリンにみられる食事の影響や他の薬剤との相互作用が少なく、吸収も速やかで効果発現までに時間がかからず効果消退も速やかで、術前でのヘパリンへの置換が不要である。さらに、大規模臨床試験から非弁膜症性心房細動での心原性脳梗塞の発症予防効果はワルファリンと同等以上で、かつ出血性副作用(とくに頭蓋内出血)が少ないことが判明している。新たな経口抗凝固薬の登場は、様々な血栓性疾患の診療における抗凝固薬の選択肢を増やすもので、種々血栓性疾患への適応拡大が認められ、より安全でかつ有効な血栓症治療/予防法への活用が大いに期待される。本シンポジウムでは、「経口抗凝固薬Update」と題して、基礎的な観点から血栓形成制御メカニズムや抗凝固薬開発の歴史を踏まえ、経口抗凝固薬についての話題を提供する。