第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

下肢静脈瘤3

2014年10月31日(金) 13:48 〜 14:36 第3会場 (202会議室)

座長: 廣川雅之(お茶の水血管外科クリニック), 三井秀也(特定医療法人三栄会 ツカザキ病院 心臓血管外科)

13:48 〜 14:36

[O-21-3] 下肢静脈瘤の自覚症状に対する漢方製剤3処方の治療成績と処方選択に関する考察

林忍1, 渋谷慎太郎1, 大久保博世1, 下河原達也1, 市野瀬剛1, 長島敦1, 松原健太郎2, 尾原秀明2, 北川雄光2 (1.済生会横浜市東部病院 外科(血管外科), 2.慶應義塾大学 外科)

キーワード:varicose veins, kampo prescription

【はじめに】下肢静脈瘤には倦怠感,疼痛,しびれ等の自覚症状が伴うことも少なくないが,当科ではレーザーやストリッピング手術などの根治的治療の待機期間中,弾性ストッキングによる圧迫療法に加えて自覚症状の軽減を目的とし漢方製剤を併用している。我々はこれまでに漢方製剤3処方(桂枝茯苓丸,五苓散,柴苓湯)の下肢静脈瘤に対する臨床的有用性につき検討し報告を行ってきた。これまでの報告を総括するとともに,下肢静脈瘤に対する漢方製剤の処方選択について若干の考察を加えた。【結果】いずれの処方も患者の自覚症状を改善したが,特に改善した症状は各々の製剤の効能に一致し,処方ごとに相違が認められた。桂枝茯苓丸には微小循環の改善効果が,五苓散,柴苓湯には浮腫の軽減効果が認められた。また,桂枝茯苓丸には効果に性差が認められ,女性で奏功したが,五苓散,柴苓湯の効果には性差を認めなかった。CEAP分類により評価した静脈瘤重症度の改善率は桂枝茯苓丸が高く,特に色素沈着,湿疹,浮腫の改善が認められた。加えて桂枝茯苓丸は投与目標である東洋医学的概念「お血」と患者の自覚症状に関連性が認められた。【考察】下肢静脈瘤の愁訴に対する漢方治療としては,桂枝茯苓丸が基本となりうる。しかし,高度の浮腫が伴う場合,また妊娠中など何らかの事情で桂枝茯苓丸の投与が望ましくない症例には五苓散または柴苓湯,特に血栓性静脈炎等の疼痛や炎症が顕著な症例では柴苓湯の投与を考慮するのがよいと思われた。【結語】いずれの検討もsingle-arm studyであり,それぞれ投与対象が若干異なるが,下肢静脈瘤の愁訴に対する漢方製剤3処方の選択基準が示唆された。