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[O-30-3] 弓部全置換における脳梗塞回避のための工夫
キーワード:total arch replacement, cerebral infarction
【目的】弓部全置換における脳梗塞回避のための当科における工夫について報告する。【対象】2002年1月から2014年6月までの待機的に行った弓部全置換115例を対象とした。これらを前期群(2007年まで)42例と後期群(2008年以後)73例に分けて脳梗塞の発生頻度を比較した。脳保護法は一貫して低体温,右腋窩送血併用選択的脳灌流を行ってきた。後期群において,shaggy aorta合併例では両側腋窩送血を行う,CABGとの同時手術において標的血管を制限し,SVGの中枢吻合は人工血管に行う,左鎖骨下動脈の剥離は循環停止後に行う,等の工夫を行った。【結果】平均年齢は前期群72歳,後期群73歳で差を認めなかった。CABGとの同時手術は前期群21例(50%),後期群16例(22%)で後期群において有意に少なかった。両側腋窩送血は前期群0例,後期群25例(34%)であった。手術時間は前期群486分,後期群497分,体外循環時間は前期群278分,後期群270分でいずれも差を認めなかった。下半身循環停止時間は前期群83分,後期群103分で後期群において有意に長かった。最低直腸温は前期群19℃,後期群22℃で後期群において有意に高かった。術後脳梗塞は前期群5例(12%),後期群1例(1.4%)で後期群において有意に少なかった。前期群の5例はいずれもCABGとの同時手術症例であった。後期群の1例は大動脈炎症候群のAVR後の再手術症例であった。在院死亡は前期群0例,後期群1例(1.4%)であった。後期群の死亡例は肝硬変合併症例であった。【まとめ】弓部全置換における我々が行っている脳梗塞回避の工夫は有用であった。冠動脈病変を合併した症例は脳梗塞のハイリスクとして注意する必要があると思われた。