第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(口述)

その他1

2014年10月31日(金) 13:00 〜 13:40 第5会場 (201会議室)

座長: 池澤輝男(総合上飯田第一病院 外科), 森景則保(山口大学医学部 第一外科)

13:00 〜 13:40

[O-33-2] 下腿動脈バイパス長期開存例のin situ大伏在静脈グラフトの組織学的検討

山尾順1, 駒井宏好1, 今村敦2 (1.関西医科大学附属滝井病院 末梢血管外科, 2.今村血管外科クリニック)

キーワード:in situ, vein graft

症例は76歳男性。2004年下肢閉塞性動脈硬化症に対して人工血管を用いた左外腸骨-右大腿動脈バイパスおよびin situ大伏在静脈グラフトを用いた右浅大腿-後脛骨動脈バイパスが行われた。術後問題なく経過したが最近は血管外科受診を自己中断していた。内服薬はチエノピリジン系抗血小板薬を他院で処方されていた。本年になり肺炎を契機に当院にて入院加療が開始されたが入院中突然の右下肢痛,足部チアノーゼがあり当科へ紹介となった。ABI検査では患側は測定不能であり超音波検査にて右下肢バイパスグラフト閉塞と診断した。局所麻酔下に緊急血栓除去術を施行したが再開通が得られなかったため,翌日全身麻酔下に修復術を行った。グラフト中枢側吻合部は血栓除去にて再開通が得られたがその後の術中造影にてグラフト末梢側吻合部に狭窄像を認めたため,対側の大伏在静脈を用いたバイパス(グラフト-足部後脛骨動脈へのバイパス)を行った。術後経過は良好で1週後の造影検査でもバイパスグラフトは全長にわたり問題なく開通していた。修復時に採取したグラフト標本の組織学的検討を行ったところElastica Masson染色では静脈グラフト内膜に膠原線維の増生を認め,紡錘型細胞周囲に弾性線維も認められた。免疫染色の結果この紡錘型細胞にはSMA(+),Vimentin(++),Desmin(-)であり,グラフト中膜の平滑筋細胞ではSMA(++),Vimentin(++),Desmin(+)であった。この結果から中膜以外より誘導された平滑筋由来の細胞および膠原線維による新生内膜肥厚の存在が考えられた。今回in situ大伏在静脈による下腿動脈バイパス10年後の静脈グラフト検体が得られたのでその組織学的検討を報告した。