第55回日本脈管学会総会

講演情報

一般演題(ポスター)

その他3

2014年10月30日(木) 15:20 〜 16:02 第7会場 (第2練習室)

座長: 谷口哲(弘前大学 胸部心臓血管外科)

15:20 〜 16:02

[P-11-3] 下肢静脈瘤の治療後にTrousseau症候群の合併を認めた1例

今井崇裕 (西の京病院 血管外科)

キーワード:Trousseau syndrome, deep vein thrombosis

【はじめに】悪性疾患による凝固亢進で起こる深部静脈血栓症はTrousseau症候群と定義される。担癌状態で凝固亢進状態が起こる原因は腫瘍細胞に発現する組織因子,腫瘍細胞から血中に分泌されるムチンの関与が指摘されている。当院で経験したTrousseau症候群の1症例を報告する。【症例】68歳男性。既往歴は高血圧症。左下肢の熱感と疼痛で受診。超音波および静脈造影で大伏在静脈は全長血栓閉塞しており,深部静脈は異常なし。進行した20年来の下肢静脈瘤に起因する表在静脈の血栓性静脈炎と診断し,保存的加療の17日後に大伏在静脈ストリッピング術を行った。【経過】経過良好であったが,術後23日目に左下肢の腫脹出現。D-dimer:24.5μg/mLと上昇,超音波で膝窩静脈から外腸骨静脈の深部静脈血栓症を認めた。発症早期で血栓の範囲を考慮して,IVCフィルター留置後に血栓溶解療法開始。深部静脈血栓症の原因検索でCEA:13.3ng/mL,CA-19-9:183U/mLと腫瘍マーカー高値。抗凝固療法中であったが,上部消化管内視鏡で胃体部全域を占める進行胃癌を認めた。腹部CTで大動脈周囲リンパ節は腫大しており外科に転科となった。【考察】血栓性静脈炎を伴う下肢静脈瘤は術後23日経過しており,深部静脈血栓症は悪性腫瘍に伴う凝固亢進状態によるTrousseau症候群と診断した。深部静脈血栓症は悪性腫瘍も考慮して原因検索を行うが,表在静脈の血栓性静脈炎でも下肢静脈瘤以外に深部静脈血栓症と同様原因を精査すべきであると思われた。【結語】血栓性静脈炎から下肢静脈瘤の手術を経て,深部静脈血栓症を発症後に進行胃癌を認めたTrousseau症候群の1症例を経験した。深部表在問わず血栓症では,悪性疾患も考慮すべきである。