3:56 PM - 4:26 PM
[P-14-3] 腹部主要分枝に解離が及ぶ慢性B型大動脈解離に対して二期的ハイブリッド手術を施行した一例
Keywords:chronic aortic dissection, hybrid operation
【背景】慢性B型大動脈解離の治療に関しては未だに議論が多い。一方,腹部大動脈瘤・下行大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術は広く普及し,これらに対しては第一選択の治療法となった。今回,慢性B型解離症例に対して二期的ハイブリッド手術を施行し良好な結果を得たので報告する。【症例】65才男性。2006年発症の慢性B型解離で併存疾患に潰瘍性大腸炎を有していた。2013年7月に当科初診時は大動脈径から絶対的手術適応はないと判断した。2014年3月に背部痛を自覚し,下行大動脈瘤破裂の診断で緊急手術の方針となったが,術中所見で破裂はなく特発性肋間動脈破綻と診断した。しかし,この時点で大動脈径は61×70mmに増大しており手術適応と判断した。解離は偽腔開存型で左鎖骨下動脈分岐後から外腸骨動脈まで及び,open surgeryではCrawford II型に準じた広範囲大動脈置換術を要し,非常に高い侵襲が予想された。そこで,われわれは先行するTEVARにてprimary entryを閉鎖し,Crawford IV型に置換範囲を縮小したのちの胸腹部大動脈置換術を施行する治療戦略とした。Adamkiewicz動脈(AKA)は第9肋間から分岐しておりこれを温存すべく,Zone2からT9までのTEVARを先行し,3週間後に腹部主要分枝,AKAの再建を含む胸腹部置換を施行した。術後経過は良好で術翌日に人工呼吸器離脱,脊髄虚血に伴う合併症を認めることなく,胸腹部置換術後20日目に自宅退院となった。【考察・結語】二期的手術を行う利点として,置換範囲の縮小,脊髄虚血のリスク軽減,片肺換気の回避,手術時間の短縮などが挙げられる。二期的手術を施行することにより,広範囲大動脈置換術に特有の合併症を回避出来る可能性が示唆された。