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[P-21-2] 遺残坐骨動脈の診断追跡に超音波検査が有用だった1例
キーワード:Persistent sciatic artery, ultrasonography
【はじめに】坐骨動脈は胎生期初期の下肢主要血管であるが,本来は外腸骨動脈,大腿動脈の発達過程で消退していく。これが残ったものが遺残坐骨動脈であり,稀な先天性異常である。今回我々は急性動脈閉塞により発見された遺残坐骨動脈の診断追跡に超音波検査が有用であった症例を経験したので報告する。【症例】60歳,女性。従来左下肢疼痛のため運動制限をしていたが,今回左下肢の高度安静時痛,冷感,しびれの増悪を認め,当院に紹介受診となった。初診時左膝窩動脈,足背動脈,後脛骨動脈の拍動は触知不良,ABIは右0.93,左0.56だった。【経過】超音波検査では左浅大腿動脈は右と比べ低形成で,膝窩動脈への連続性が確認できず,膝窩動脈は末梢で血栓閉塞していた。また大腿背面を走行する動脈は膝窩動脈へ達していた。3DCTにより完全型遺残坐骨動脈と診断され,臀部に瘤化を認めた。本人の希望もあり,入院にてパルクス点滴を施行,症状消失したため退院となった。退院3か月後のABIは右1.20,左0.89,超音波検査では,遺残坐骨動脈は瘤も含めて血栓閉塞しており,初診時にみられた膝窩動脈の血栓は消失していた。その後症状の悪化はみられず,現在も経過観察中である。【考察】今回超音波検査で浅大腿動脈低形成,膝窩動脈に連なる大腿背面を走行する動脈により遺残坐骨動脈の可能性を考え,3DCTにて遺残坐骨動脈の完全型と診断できた。本症例のように経過観察を行う場合には,無侵襲で繰り返し検査が可能な超音波検査が有用である。通常検査時も当てはまるが,特に急性動脈閉塞のような緊急検査時も遺残坐骨動脈の可能性を考慮し,浅大腿動脈の低形成まで評価する必要があると考えられた。