第55回日本脈管学会総会

Presentation information

一般演題(ポスター)

EVAR1

Thu. Oct 30, 2014 3:20 PM - 4:02 PM 第7会場 (第2練習室)

座長: 佐伯宗弘(鳥取大学医学部附属病院 心臓血管外科)

3:20 PM - 4:02 PM

[P-8-3] 保存的加療と腹部ステントグラフト内挿術が奏功した炎症性腹部大動脈瘤の1例

今井伸一1, 廣松伸一1, 鬼塚誠二1, 田原宣広2, 吉田尚平1, 大野智和1, 細川幸夫1, 飛永覚1, 大塚裕之1, 澤田健太郎1, 明石英俊1, 田中啓之1 (1.久留米大学 外科, 2.久留米大学 心臓血管内科)

Keywords:inflammatory aorta aneurysm, EVAR

炎症性腹部大動脈瘤(IAAA)は瘤壁の著明な肥厚と周囲臓器との癒着や線維化を特徴とし,組織学的に瘤壁に高度の炎症性変化を認める病態で,腹部大動脈瘤全体の3~10%に発症するとされる。治療については,開腹下人工血管置換術では周囲組織との強固な癒着による合併症発生率が高いため,近年では腹部ステントグラフト内挿術(EVAR)による治療の報告が散見される。今回我々は保存的加療とEVARが奏功したIAAAを経験したので報告する。症例は59歳男性。腹痛と背部痛を主訴に受診し,造影CTで後腹膜線維症とIAAAを指摘された。PET-CTでは動脈瘤壁全周に集積を認めた。IgG4は正常値で,他の自己免疫性疾患はなかった。瘤径37x39mmで他臓器障害はなかったため保存的加療とした。症状は自然軽快し,炎症反応遷延も無かったため,ステロイド投与は行わずに経過観察した。またスタチン製剤投与を開始したが,CK上昇の副作用が発現したため継続困難であった。1年半の経過で瘤周囲の炎症はほぼ消退したが,瘤径42x47mmに達したため手術適応とした。形態的にEVAR可能であったが,術後に動脈瘤周囲炎症が再燃する報告も散見されるため,機器は腎動脈上ベアステントを有しないExcluderを選択し,十分な中枢ネックに対し,腎動脈分岐部よりやや末梢に留置することで,将来的に人工血管置換術となった場合に難渋しないよう工夫した。術後CTでエンドリークなく臨床的成功を得て,自宅退院となった。術後6ヶ月のCTとPET-CTで瘤径縮小と動脈瘤壁の集積消失を認め,炎症の再燃なく治療が奏功していることが確認できた。