第55回日本脈管学会総会

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会長要望演題

下大静脈フィルターの功罪

Thu. Oct 30, 2014 3:00 PM - 3:50 PM 第3会場 (202会議室)

座長: 福田幾夫(弘前大学医学部 胸部心臓血管外科)

3:00 PM - 3:50 PM

[PR-10-5] 下大静脈フィルター閉塞例の検討

谷掛雅人1,4, 山本栄司2,4, 正木元子3,4 (1.京都市立病院 放射線診断科, 2.京都市立病院 外科, 3.京都市立病院 循環器科, 4.VTE対策チーム)

Keywords:IVC filter, DVT

【目的】下大静脈フィルター(IVCF)留置後の下大静脈血栓閉塞は,穿通,破損と並ぶ合併症の一つである。今回当院で経験したIVCF閉塞例を検討し,その発生要因,対策について検討した。【方法】対象は何らかの症状を有し,造影CTにてIVCF血栓閉塞と診断された9症例。これらにつき,発生時のIVCFおよび患者の状況をretrospectiveに検討。【結果】<IVCFの状況>filterの種類:OptEase 6例 GüntherTulip 3例。留置部位:infrarenal7例,suprarenal2例。留置から閉塞までの期間:2週間以内 5例,2か月以上 4例。血栓:filter部分のみでの閉塞 2例,filterから一側ないし両側下枝に閉塞が及ぶもの7例。<患者の状況>症状:下枝浮腫7例,腰背部痛2例,ショック1例,急性腎不全1例全例に何らかの悪性腫瘍などのrisk factorあり。抗凝固療法は8例で実施されていたが,有効な治療域に達していたのは1例のみであった。尚,全例に経カテーテル的血栓溶解,吸引除去を行い,再開通および症状の改善に成功している。【結語】IVCF閉塞は,多量の血栓捕捉とこれによって引き起こされた下大静脈の血流障害により二次血栓が形成されて起こるものと推測される。filterの効果で致死的な肺動脈血栓塞栓症を防止したことによる,やむをえぬ副作用と言えるが,時に重篤な症状をきたすこともあり看過できるものではない。この防止には,十分な抗凝固療法が有効な可能性がある。