9:15 AM - 9:25 AM
[1A4V] 前腟壁が無くても全腟閉鎖はできる
─尿道延長術&全腟閉鎖術の経験より─
Keywords:全腟閉鎖術、トランスジェンダー、腟断端脱
【緒言】当院では、身体は女性、性自認は男性の「トランスジェンダー男性(TM)」に対し、婦人科と形成外科で腹腔鏡下子宮・附属器摘出術(内性器摘出術、内摘)と乳房切除術を導入した。日本精神神経学会ガイドラインに準拠した外部のジェンダー委員会で身体的性別適合手術の適応と判断されたものを対象としている。2021年からは、内摘+尿道延長+全腟閉鎖術も開始した。尿道延長は、前腟壁を反転させ尿道口から陰核まで尿道を延長する術式で、当事者にとっては尿線が上を向くため、エピテーゼ(義陰茎)を当てやすくなるメリットがある。尿道延長に使用した前腟壁以外の腟壁で腟閉鎖を行うが、腟が狭いTMでは経腟操作は困難である。そこで経腟および腹腔鏡で全腟閉鎖を行う手術手技について報告する。 【手技】腹腔鏡下に前腟壁から膀胱を剥離した後、子宮・両側附属器を摘出。前腟壁を帯状に切開したものを形成外科医が経腟的に反転させ膀胱留置カテーテルに沿って管腔構造を形成する。その後、腟粘膜を除去した左右側壁と背側の腟壁を経腟的および腹腔鏡下に縫合し、全腟閉鎖とする。 【結果】2020年から2023年3月末までに、内摘と同時に尿道延長・全腟閉鎖術を行ったのは7例あった。皮弁として利用した前腟壁(膀胱)側には運針できないが、側壁と後腟壁のみで全腟閉鎖は可能であった。 【考察、結語】近年、泌尿器科領域において膀胱全摘術後に、前腟壁が欠損し腹膜のみとなった部位に起こる断端脱(小腸瘤);anterior enterocele(AE)が問題になっている。前腟壁が欠損する共通した状況であり、当院の術式がその予防策や治療策の参考になれば幸いである。