10:00 AM - 10:15 AM
[2A10W] [ワークショップ POP手術 実臨床におけるニーズとSDGsの検討] 骨盤臓器脱患者の高齢化と治療方法
Keywords:超高齢化社会、骨盤臓器脱、治療選択
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2003年 京都府立医科大学医学部医学科 卒業
2003年 同附属病院 産婦人科
2005年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 産婦人科
2005年 国際親善総合病院 産婦人科
2008年 順天堂大学医学部附属練馬病院 産婦人科
2009年 昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科
2012年 越谷市立病院 産婦人科
厚生労働省令和3年簡易生命表、および内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、令和3年の日本の女性の平均寿命は87.57歳、高齢化率(65歳以上)は28.9%と年々上昇傾向であり、令和47年にはそれぞれ91.35歳、38.4%に達すると予測されている。骨盤臓器脱は高齢者に発症することが多く、超高齢化社会に伴い、患者数の増加と手術年齢の高齢化が見込まれる。
当院の骨盤臓器脱外来の患者年齢も近年上昇傾向である。手術を選択する高齢者が増加する一方、合併症のため手術困難で保存的療法を選択する症例も多い。ペッサリー管理に難渋する症例や尿閉を伴う完全脱では、高リスクであっても手術せざるを得ないことがある。
2010年1月から2022年12月までに当院で骨盤臓器脱手術を施行した1163例について検討したところ、2010年の患者年齢は67[43-82]歳であったのに対し、2022年には72[53-86]歳と、12年間で有意差をもって上昇し、80歳以上の高齢者の割合は、2010年の2.7%から2022年には15.2%に上昇していた。
当院では高齢者に対し、安全に手術を行うために以下のことに留意している。
高齢者は臓器の機能低下があり、循環器・呼吸器系機能等の評価が重要である。併存疾患による内服薬が多く、かかりつけ医からの情報提供を要すると共に薬剤師による確認を行っている。核家族化が進み一人で来院する症例も多いが、可能な限り家族と共に手術説明をすることが重要である。術式の選択は心肺機能や認知機能を含めた全身状態と骨盤臓器脱の程度・損傷部位を合わせて決定している。術後はフレイル予防のため可能な限り早期退院を目指すが、入院が長期になる場合は、理学療法の早期介入により運動・認知機能低下を予防するようにしている。
2018年1月から2022年12月までに手術施行した80歳以上の42例について検討すると、Le Fort中央腟閉鎖13例、全腟閉鎖13例、腟式NTR8例、TVM7例、腹腔鏡下腟断端挙上1例、LSC施行例はなく、比較的短時間で終了する腟閉鎖が61.9%を占めた。周術期合併症は80歳以上の症例と未満の症例に有意差は認めず、安全に手術可能であった。
すべての骨盤臓器脱患者および家族が納得し、適した治療選択ができること、患者が治療後ADLを維持し充実した余生を送れることが重要だと考えている。
2003年 京都府立医科大学医学部医学科 卒業
2003年 同附属病院 産婦人科
2005年 順天堂大学医学部附属順天堂医院 産婦人科
2005年 国際親善総合病院 産婦人科
2008年 順天堂大学医学部附属練馬病院 産婦人科
2009年 昭和大学横浜市北部病院 泌尿器科
2012年 越谷市立病院 産婦人科
厚生労働省令和3年簡易生命表、および内閣府の令和4年版高齢社会白書によると、令和3年の日本の女性の平均寿命は87.57歳、高齢化率(65歳以上)は28.9%と年々上昇傾向であり、令和47年にはそれぞれ91.35歳、38.4%に達すると予測されている。骨盤臓器脱は高齢者に発症することが多く、超高齢化社会に伴い、患者数の増加と手術年齢の高齢化が見込まれる。
当院の骨盤臓器脱外来の患者年齢も近年上昇傾向である。手術を選択する高齢者が増加する一方、合併症のため手術困難で保存的療法を選択する症例も多い。ペッサリー管理に難渋する症例や尿閉を伴う完全脱では、高リスクであっても手術せざるを得ないことがある。
2010年1月から2022年12月までに当院で骨盤臓器脱手術を施行した1163例について検討したところ、2010年の患者年齢は67[43-82]歳であったのに対し、2022年には72[53-86]歳と、12年間で有意差をもって上昇し、80歳以上の高齢者の割合は、2010年の2.7%から2022年には15.2%に上昇していた。
当院では高齢者に対し、安全に手術を行うために以下のことに留意している。
高齢者は臓器の機能低下があり、循環器・呼吸器系機能等の評価が重要である。併存疾患による内服薬が多く、かかりつけ医からの情報提供を要すると共に薬剤師による確認を行っている。核家族化が進み一人で来院する症例も多いが、可能な限り家族と共に手術説明をすることが重要である。術式の選択は心肺機能や認知機能を含めた全身状態と骨盤臓器脱の程度・損傷部位を合わせて決定している。術後はフレイル予防のため可能な限り早期退院を目指すが、入院が長期になる場合は、理学療法の早期介入により運動・認知機能低下を予防するようにしている。
2018年1月から2022年12月までに手術施行した80歳以上の42例について検討すると、Le Fort中央腟閉鎖13例、全腟閉鎖13例、腟式NTR8例、TVM7例、腹腔鏡下腟断端挙上1例、LSC施行例はなく、比較的短時間で終了する腟閉鎖が61.9%を占めた。周術期合併症は80歳以上の症例と未満の症例に有意差は認めず、安全に手術可能であった。
すべての骨盤臓器脱患者および家族が納得し、適した治療選択ができること、患者が治療後ADLを維持し充実した余生を送れることが重要だと考えている。