第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演1群 栄養摂取・嚥下機能の維持向上

Fri. Sep 27, 2024 11:15 AM - 12:15 PM 第6会場 (大会議室A4)

座長:髙木 智美

[口演1-4] 安全な摂食・嚥下に向けた多職種での取り組み

山口 幸枝, 梶谷 美佐子 (京都からすま病院)

【背景】A病院では、摂食・嚥下におけるチームとしての取り組みはなく、誤嚥・窒息事例が発生しても、具体的な対応が見出せなかった。そこで、医療安全としてカンファレンスを通して、多職種による安全な摂食・嚥下に取り組むこととした。【目的】摂食・嚥下に関するハイリスク患者に対して、多職種で摂食・嚥下状態を評価し、安全な食事摂取を目指す。【実践内容・方法】倫理的配慮として、A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号A-04)202X年7月医療安全の活動として、毎月、看護師、言語聴覚士、理学療法士、管理栄養士によるカンファレンスを開催した。この中で、摂食・嚥下に関する客観的評価がないことが課題となった。そこで、医師より食事開始指示のある患者を対象に①ハイリスクの選定②とろみを使用した水飲みテスト③食事摂取状況の観察項目の標準化を図り、段階に応じた摂食・嚥下の評価基準を作った。また、摂食リハビリテーション、食事体位、食事介助方法や窒息時の対応、看護計画の標準化についてマニュアルを作成し、フローチャート®による多職種介入のタイミングを可視化した。11月に医療安全管理委員会の承認を受け、関係職種に周知を図った。【結果】202Y年2月1日から29日迄に、対象者は9名で認知症レベルⅢ以上が8名、平均年齢は88.1±7.11歳であった。90代の腰椎圧迫骨折患者は、在宅ではとろみなしで咽せはないという情報であったが、看護師による水飲みテストでは咽せがあった。医師に報告、管理栄養士に相談し、食事は「嚥下きざみとろみ」水分は「とろみ付き」に変更し、誤嚥なく摂取。その後、食事形態もアップできた。しかし、入院時から言語聴覚士が介入している患者4名のうち2名は①ハイリスク選定③看護師による食事摂取状況の観察の記載はなかった。【考察】多職種カンファレンスによって、各職種が安全な食事と共に、口から食事をする重要さを目標とし、摂食・嚥下に対して取り組む機会となった。永田は「窒息事故における法的争点は、窒息・誤嚥の予見可能性、食事形態の適切さ、食事時の見守り体制、事故発生後の速やかな対応がとられていたかどうかの4点に分けられる。」1)と述べている。窒息・誤嚥の予見については、ハイリスク選定と水飲みテスト、及び食事形態の選定、食事時の観察、事故発生時の対応はマニュアルにより標準化を図ることができた。しかし、言語聴覚士が介入する患者にハイリスク選定や食事観察ができていない点では、看護師が患者を中心とした多職種で介入することの理解や役割意識の低さが残る結果となり、多職種チームで取り組むことの意義について理解を深めることが、今後の課題である。各職種が専門性を発揮し、良い医療につなげていきたい。【実践への示唆】患者が安全な食事摂取をするために、看護師の役割意識を高め、多職種で協働できる取り組みを今後も続けていく。