第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

口演

口演4群 早期離床に向けた取り組み

2024年9月27日(金) 11:15 〜 12:15 第9会場 (中会議室D1+D2)

座長:阿久津 美代

[口演4-2] 誤嚥性肺炎が長期化する現状と課題の後ろ向き研究

~診断群分類別包括評価を用いて~

永崎 里奈1, 牧野 桃子2, 岡田 桃子1, 大崎 愛莉1 (1.川崎医科大学総合医療センター, 2.川崎医科大学高齢者医療センター)

【緒言】A病院は診断群分類別包括評価(以降DPC)導入病院で、誤嚥性肺炎のDPCⅢ以上が占める割合は34.6%であり、入院が長期化する傾向にあった。入院期間短縮の根拠となる実態の解明のため調査を行った。【目的】誤嚥性肺炎患者のDPCⅠ・Ⅱ期間とⅢ期間以上で退院した患者のデータを比較、実態の解明と退院困難要因を分析し課題を明確にする。【方法】202X年4月1日~202Y年3月31日にA病院へ入院した誤嚥性肺炎患者 81名の後ろ向き研究。各項目のデータを➀DPCⅠ・Ⅱ期間内で退院した群➁DPCⅢ期間以降に退院した群の2群に分類し比較。研究対象者のデータは通し番号を付与し匿名化を行った。本研究はA大学倫理委員会承認済(承認番号:6064-00)。【結果】平均入院期間は、DPCⅠ・Ⅱ群は13日、DPCⅢは42日とDPCⅢ群のほうが29日間長かった。比較項目46項目中、退院に影響を与えた項目は、栄養状態・言語リハビリ介入の有無・嚥下検査の実施・胃瘻造設・肺炎の治療経過・転院調整であった。対象患者の全員がBMIやせ型(18.5未満)且つ入院時点で軽度の栄養障害(Alb3.5g/dl以下)があった。また、入院時のスクリーニングにおいてDPCⅢ群では中等度~高度の栄養障害(Alb2.0g/dl以下)をもつ患者が約6割であった。嚥下機能では、DPCⅢは8割以上が言語リハビリテーションを介入され、その5割が嚥下検査を実施し、半数が検査後、絶食・食事形態が低下した。嚥下困難となり胃瘻を造設した患者は1割程度だったが、造設するまでの期間はDPCⅢ群が8日間長かった。治療経過では、DPCⅢ群は炎症反応の正常化までに時間を要し、また抗生剤・酸素投与、吸引などの医療依存度の高い期間も長かった。退院調整は、DPCⅢ群が10日以上長く、肺炎の再燃・別疾患の治療・入院中の感染症罹患による回復遅延があった。ADLや嚥下機能の低下、施設や家族の介護力不足による再調整、医療行為の継続で条件が限られた病院との調整があった。【考察】大荷は、高齢者の栄養障害は、ADLやQOL低下だけでなく、呼吸機能の低下や創傷治癒の遅延、免疫力を低下させ、生命予後を大きく左右すると報告している。低栄養患者の多いDPCⅢ群では、入院時すでに嚥下機能低下が起きていることが考えられた。嚥下検査のあと半数が絶食や食事形態を下げており、さらなる嚥下機能低下が予測された。炎症反応の改善が乏しく、治療の継続、退院調整の長期化などから考察すると、低栄養・嚥下機能が入院日数に影響していると考えられた。退院調整期間については、病院と家族との連携・施設のシステム・転院先のベッド空き待ち状況などによって変化するため、調整期間の短縮には限界があった。【結論】誤嚥性肺炎患者の入院期間が長期化する原因として、低栄養や嚥下機能の低下が影響していた。いかに栄養状態を低下させることなく維持・改善をさせることが重要である。発症入院後の、入院期間短縮への取り組みには限界がある。