[口演41-4] 患者を生活者として捉える手術室看護師育成
~病棟への院内留学を企画して~
【背景】A病院では新人から手術室を希望し入職してくる看護師が多く、技術習得には熱心に取り組む一方で、患者を生活者として捉える事には視点が向きづらい状況である。手術室看護師も患者の生活を知り、周術期として捉える教育が必要である。【目的】周術期の視点で患者に関わる手術室看護師の育成【実践内容・方法】手術室に勤務する3年目看護師3名を対象に院内の一般病棟へ院内留学を企画した。20XX年Y月から開始し、期間は1人2週間、夜勤も1回経験できるようにした。院内留学先は、整形外科病棟とした。対象を3年目とした理由は、手術室で一通りの術式を経験し、自立していることや新人教育を担う予定であり、手術室のあるべき姿を考え看護観を深めるきっかけにしてほしいと考えたためである。期間を2週間とし夜勤も組み込んだ理由は、2週間で患者の術前から術後、リハビリ期までの一般的な経過を看ることができ、夜間の看護実践を学ぶことができると考えたからである。整形外科病棟を選択した理由は、A手術室の年間手術件数の3分の1を占めていることから疾患の理解がしやすいこと、術後経過が見えやすく回復過程を学びやすいと考えた。病棟看護師のシャドウを行い、患者の受け持ちまでは至らなかったが、術前から術後の経過を看ることができた。院内留学後はアンケートを実施し、部署内でリフレクションを行った。A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号371)【結果】整形外科病棟で予定通り実施できた。アンケートから「今まで手術室の看護しか見えていなかったが、術後患者がどのように生活をしているか知ることができた」と3名共に答えている。また、リフレクションの中では自分自身が手術室で看ていた患者とは違い、経過と共にADLがアップしていく患者を目の当たりにし、術中看護の重要性、手術室から病棟へ看護を継続していくことの大切さなどを学んだと答えていることから目的は達成できた。【考察】A病院手術室では入職後、直接介助からスタートし、対器械、対物品、対医師の中で患者が見えにくい環境である。院内留学をすることで、患者を術前から術後までの回復過程を見、手術室では経験できない患者の声や患者の変化に気付くことが出来た。病棟での患者の日常を知ることが、自分たちの手術室での看護を振り返り周術期として患者を捉えることができる一助になったと考える。この経験を通して、患者を生活者として捉えるための看護師育成に繋がると考える。手術看護の専門的実践能力には、患者の安全を重視した患者主体の看護実践が求められる。手術看護は手術室内だけで完結するのではなく、患者を生活者として捉えることができる院内留学は効果的である。【実践への示唆】今回は2週間の院内留学で患者の受け持ちまでには至らなかったが、より患者を生活者として捉えるためには病棟看護師と共に看護過程の展開をすることも必要である。