[口演48-2] せん妄リスク患者への酸素投与方法の検証
ネブライザー式酸素供給装置を活用して
【緒言】 せん妄症状により酸素カヌラやマスクを外す患者の呼吸状態悪化予防のために、身体拘束を行うことが課題であった。先行研究にて酸素吸入を拒否する認知症患者に対しネブライザー式酸素供給装置を使用し口元へ吹き流して酸素投与方法を工夫した事例検討があった。先行研究の課題として件数を増やし検討を重ねる必要があると述べていたため検証した。 【目的】 せん妄リスク患者へネブライザー式酸素供給装置を使用し口元へ吹き流して酸素投与する方法は、患者の身体拘束を行わずに酸素投与ができるか検証する。 【方法】 研究対象はA病院総合内科病棟に202X年1月~5月に入院し、せん妄リスクがあり、障害高齢者日常生活自立支援度C-1、C-2で、酸素1~2L/分で投与の患者とした。医師の指示のもと、ネブライザー式酸素供給装置を6L/分酸素濃度35%で設定し、回路からの酸素が患者の口元に送気するよう蛇管の吹き出し口を顔に向け装着した。身体拘束なく酸素投与を離脱できた症例を成功例とした。呼吸状態の悪化や呼吸状態以外の理由でやむを得ず身体拘束をした場合を中止例とした。成功例と中止例を比較検討した。対象者には安全確保を最優先することや、個人が特定されないよう匿名化することと情報の管理について、また、学術集会で症例報告として発表することを書面で説明し、同意書をもって同意を得た。本研究はA病院倫理委員会の承認を得た。(承認番号A-4-8) 【結果】 研究対象者は8例のうち、3例が成功、5例が中止となった。成功例では介入前に身体拘束をしていたが、介入後は身体拘束を解除できた。回路が体動により外れることもあったが、酸素カヌラを外す回数より少なかった。また、せん妄症状が改善し意識レベルの改善がみられた。中止例は、睡眠時無呼吸症候群による酸素飽和度の低下、痰の増加、顎の形や輪郭により安定的に酸素が供給できる固定が難しい事などが理由であった。 【考察】 ネブライザー式酸素供給装置を使用し口元へ吹き流して酸素投与する方法は身体拘束をせずに酸素投与する選択肢になる。直接顔に触れる酸素カヌラやマスクと違い、この方法は顔に触れる不快感がなく、外す行為が減るため身体拘束解除につながった。身体拘束解除によりせん妄症状や意識レベルの改善がみられ、患者にとって大きな利益となった。設定を高流量、高濃度に変更することで、この方法での酸素投与も可能になる症例もある。しかし、回路の固定が不安定で確実に酸素投与が出来ない症例があるため、顔や体幹の動きに追従する固定方法の検討が必要である。 【結論】 ネブライザー式酸素供給装置を使用し口元へ吹き流して酸素投与する方法は、8例中3例で身体拘束をせずに酸素投与をすることができた。今後はより高流量、高濃度の酸素投与が必要な症例への検討、また、個々の輪郭や体形に合い体動にも追従する固定方法の検討が必要である。