[口演49-2] 患者経験(PX)による質評価向上にむけた看護ケア提供方法の工夫
定期的看護回診プロトコルの実践報告
【背景】患者のニーズや価値を尊重した「患者中心性の医療」を測定する質指標として、近年、Patient Experience (患者経験;PX)が国際的な主流となり、A病院でも入院患者のPX調査を開始した。202X年の調査で、「看護師とのコミュニケーション」、「ナースコール対応」の評価低下と転倒転落インシデント増加を課題とし、現在のケア提供体制の改善を検討した。アメリカ医療研究品質庁(AHRQ)が推奨する「転倒予防プログラム」の定期的看護回診プロトコル(Purposeful Hourly Rounding;PHR)は、患者ケアの効率や患者安全性を向上させ、チームメンバー間の効果的なコミュニケーションを促進することが先行研究で示唆されている。A病院で、患者とのコミュニケーション強化、患者ニーズに対応するケア提供体制を再考した。【目的】新たな看護回診による計画的ケア提供で、患者経験と患者安全の向上への成果を明らかにする。【実践内容・方法】1.看護回診の導入として、A病院版看護回診プロトコルを作成し、「GOGOラウンド」と称して3つの一般病棟で実施した。看護回診の具体的方法は、看護師が日中2時間毎に、患者の病室をラウンドし、患者のニーズが満たされていることと、転倒予防策の確実な実施を確認することである。患者ニーズの確認項目は、『Pain:痛みのアセスメントと対処』、『Potty:排泄援助』、『Position:体位変換』、『Posession:身の回りのものの整頓』、『Personal needs(個別ニーズ)』の5Pとした。2.看護回診の実践評価として、①PX調査の「ナースコール対応」、「看護師とのコミュニケーション」のスコア、②転倒転落インシデント件数、③実施病棟看護師へのアンケート調査を導入前後で比較した。PX調査及びアンケートは無記名での回答とし、調査目的や結果の発表について調査紙内で説明し、回答をもって同意を得た。【結果】PX評価『ナースコール対応』は、導入病棟とそれ以外の病棟との差はなかった。看護師とのコミュニケーションを評価する『話を注意深く聴いたか』『分かりやすく説明をしたか』『ケアに必要な情報を理解出来るように伝えたか』『退院後に必要な援助について話をしたか』の尺度は、導入病棟が高いスコアの傾向を示した。転倒転落件数の減少はなかった。看護師の評価では、『患者のニーズや思いを聴くことができている』、『ナースコールの前に排泄ケア・体位調整ができている』、『計画したケアがスムーズに実践できている』について、導入後の肯定的評価が約20%向上した。【考察】勤務者数や病棟業務の状況により、看護回診が定着していないことから、明らかな効果は評価できなかった。しかし、PX評価やアンケートから、患者・看護師間のコミュニケーション向上や個別のケア実践への効果が示唆された。【実践への示唆】看護回診は、患者ニーズの即時確認と、患者個別のケアの計画的な提供ができ、PX向上に期待できる。