第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演50群 意思決定支援

Sun. Sep 29, 2024 10:30 AM - 11:30 AM 第6会場 (大会議室A4)

座長:飯山 有紀

[口演50-2] ACP推進に向けた意識改善への取り組み

~教育学習会を実施して~

岡 瑠美1, 青江 玲子1, 餅田 敬司2 (1.枚方公済病院, 2.京都橘大学看護学部)

【背景】 厚生労働省(2023)は,’22年度の調査でアドバンス・ケア・プランニング(以下ACP)を「よく知っている」と回答した医師の割合は45.9%,看護師も同様の傾向にあり,一般国民に関してはわずか5.9%であった. がん患者の化学療法目的での入院患者を受け入れているA病棟の看護師は,進行する病期に応じて,どのような治療やケア,療養生活を望んでいるか,本人・家族の意思決定支援が不十分なまま時が経過していた.【目的】 A病棟看護師におけるACP認知度や実態を明らかにし,ACPに基づいたアプローチ方法を理解する.【実践内容・方法】 実践期間は202X年6~12月.対象はA病棟に勤務する看護師(25名)に,ACP教育学習会を実施.学習会前後で質問紙調査を行い調査結果から学習内容を検討し,ACP推進の取り組みを評価した.倫理的配慮として,A病院の倫理委員会の承認を得た(承認番号2023-017).【結果】 学習会前後でACP認知度は「知っている」が37.5%から85.8%と48.3%の増加がみられた.学習効果は90%以上の者がACPの必要性を理解していた.一方,自由記載からは「患者の思いを尊重しながら意思を確認する際のタイミング」や「介入方法の難しさ」「声かけを行うことでどのような展開になるのか心配」などACPを実践するうえでのコミュニケーションに関する不安が抽出された.【考察】 小松らは「ACPやリビングウィルを普及させるには,先ず看護師に対する普及啓発活動が必要と考えられる」と述べている.学習会による啓発活動はACPに対する推進・認知度向上に有益であった.また,看護職のためのACPマニュアルでは「ACPを意識せずに行っていた看護場面にも,たくさんのACP要素がちりばめられている」とされており,意識して具体的にACPを取り入れた意思決定支援を実践していると回答したものは1割未満であった.しかしA病棟において日常的にACPに値する看護場面は存在した. 田代らは「看護師によるがん患者へのACPの質向上のためには,患者の価値観を理解してつなげるためのコミュニケーション能力の向上,ACPについての教育プログラムの開発が必要である」と述べている.今回の啓発学習会活動がチームでACPを意識するきっかけとなり,病棟内カンファレンスで検討する機会が増えた.受け持ち看護師だけで抱えるものにせず,チームで考える場となり,さらに個人のコミュニケーションスキルや能力の向上に繋がった.ACPの知識を得たスタッフを中心にカンファレンスやその場での気づきに繋げたり,情報共有されたりと多くの気づきが生まれ相乗効果が得られた. 自由記載からは,個人の弱みや強みが抽出されたことで次の学習会のテーマとなり,入院患者全員に向けてチームとしてのACPに基づいたアプローチが可能になった.【実践への示唆】 学習会を開催しながら自身の弱みや不安を抽出できる場を作り,多くのケースを蓄積共有し,患者や家族の反応をカンファレンスで検討するプロセスを構築することが重要である.