[口演53-3] 整形外科病棟に勤務した看護師が認知する術後せん妄のサイン
【緒言】日本の高齢化率は29%を超えており、高齢者の術後の合併症にせん妄症状がある。先行研究では、ICUおよび外科病棟のせん妄発症率を病棟別に調査し、整形外科病棟は3番目にせん妄が多かったと報告している。せん妄を発症することにより、入院期間の延長、転倒のリスクが高まることが予測され、せん妄症状の出現を予防することが重要である。しかしA病院では、せん妄症状について統一したチェックリストを使用していないため、個々の看護師の経験により術後せん妄に対するケアを行っている現状である。【目的】A病院の整形外科病棟に勤務した看護師が、術後せん妄のサインをどのように認知しているかを明らかにすることを目的とした。【方法】対象はA病院の整形外科病棟に勤務した看護師6名とし、フォーカス・グループインタビューを行った。インタビュー内容から逐語録を作成し、グラウンデッド・セオリー・アプローチ法により分析を行った。本研究は、A病院の倫理委員会の承認(承認番号:113号)を経て行い、研究対象者には自由意思による研究への参加を保証し、プライバシーの保護を約束した。インタビューによる身体的な負担や回答をすることにより生じる不安や動揺など心理的な負担に配慮した。【結果】対象者から得られたデータから13のカテゴリーと31のサブカテゴリーが得られた。得られたカテゴリーから、看護師は術後せん妄のサインを捉えるために4つの段階を構成していた。『視覚・聴覚を使って術後せん妄症状の始まりを察知する』、『術後せん妄症状かどうか判断する』、『術後せん妄に備えて心の準備をする』の3つの段階を経て、看護師が考える『術後せん妄症状になりやすいと思う条件』はそれぞれの段階に影響していた。【考察】術後患者が《出かける準備をしている》、《身体症状が現れる》など具体的な行動を表したカテゴリーは、術後せん妄のサインを表す新たな言語として看護師間で共有することができると考えられた。症状が多岐にわたる術後せん妄に対応できるためにも、これらの言語が臨床で繰り返し活用されたり、より多くの看護師から新たな言語が得られるようになることで、術後せん妄のサインを、より洗練されたものとして共有することが可能になると考えられた。また、アクションリサーチだと、術後せん妄のサインを知ることで、術後せん妄症状の出現に備えを得る可能性が考えられた。看護師が術後せん妄のサインを捉える4つの段階で構成されるプロセスでは、看護師個々の経験知・身体知という知識が蓄積され、看護師の術後せん妄のケアの質が高まる可能性があると考えられる。【結論】整形外科病棟に勤務した看護師は、看護師個々の独自の表現により術後せん妄のサインを言語化していた。本研究で得られたプロセスでは、看護師が患者の術後せん妄のサインを言語化し、洗練させて捉えやすくなることが示唆された。