[口演53-4] せん妄ケアの可視化に向けた看護記録の改定
せん妄患者の背景調査結果の活用
【倫理的配慮】A病院の倫理審査委員会の承認を得た(承認番号1072)【背景】せん妄は、身体異常や薬物の使用を原因とした急性に発症する意識障害で、入院患者のせん妄有病率は10~30%、術後患者約50%、ICU患者約 80%といわれている。せん妄の発症で、各種ライン等の事故抜去、転倒・転落等の有害事象の発生、治療やリビリテーションの遅延、予後にも影響が生じることがある。A病院では、入院時にスクリーニング、ケアの実践、定期的評価を行っているが、せん妄ケアの効果の可視化には看護記録改定の必要性があった。【目的】せん妄発症患者の調査を行い、誘因を整理しスクリーニング精度の向上を行う。また、リスク因子がある患者に予防ケアの実施、症状のモニタリングを行い、せん妄発症患者には個別ケアの展開ができる看護記録に改定し、ケア効果の可視化とスタッフのせん妄ケア教育に繋げることを目的とした。 【実践内容・方法】202X年12月から202X年5月迄に入院した患者のうち、せん妄症状が出現した患者1956名を対象とした。せん妄症状と患者背景をマンホイットニーU検定、入院中にせん妄症状が増減する患者特徴を機械学習モデルのSHapley Additive exPlanationsで解析し、せん妄スクリーニング項目の改定を行った。看護記録は、せん妄リスク因子、せん妄症状が1個以上ある患者に適用され、せん妄症状はConfusion Assessment Methodの分類に準じた。予防ケアは、文献検索を行い、太陽光の調整、脱水予防、リアリティーオリエンテーションなどを選択した。症状出現時は、リスク因子の選択、因子に応じた看護ケアの実施に展開できる記録にした。【結果】解析結果から、ALB3.0g/dl以下、BMI20以下が新たなリスク因子であった。年齢は、70歳以上でせん妄症状が増加することがわかった。改定前は、60歳以上で定期的評価を行っていたため再度解析を行った。リスク因子を70歳以上に変更し新たなリスク因子を追加しても、入院後せん妄を発症する患者は、スクリーニングから除外されず、せん妄発生リスクの低い患者の記録は減少することがわかった。改定した看護記録は、症状のモニタリング、予防ケアの実施、せん妄発症時はリスク因子から個別ケアの展開ができた。【考察 】せん妄リスク因子の改定で、せん妄を発症する可能性が低い患者の評価や記録時間の減少することで看護ケアの時間確保に繋がると考える。改定した看護記録により、せん妄リスクのある患者の予防ケアの実践の可視化ができる。症状のモニタリングは、せん妄症状の変化がわかり、タイミングを見極めたケア介入、看護ケアの評価、薬剤の効果判定ができると考える。加えて多職種にも症状の変化がわかり、カンファレンスにも活用できると考える。【実践への示唆】今後、改定した看護記録の活用により、せん妄の発症や遷延・増悪予防に繋がり、多職種協働した有害事象の減少やせん妄看護の質向上に繋がると考える。