[口演54-3] 病棟看護師による下大静脈径計測の教育プログラム作成のプロセス
【緒言】超音波検査(ultrasonography:以下USとする)は、非侵襲的かつ迅速に患者の身体的状態を画像で評価できるアセスメントツールであり、看護師によるUSの実践も広がりつつある。しかし、C病棟看護師はUS教育の機会が設けられていない。そこで、C病棟看護師に下大静脈径(inferior vena cava diameter:以下IVCDとする)計測に限定したUSの教育プログラムを作成・実践し、患者の身体情報把握や看護ケアに生かせると考えた。【目的】教育プログラム前後でのUSに対する意識・知識・技術獲得についての比較検討を行い、教育の有用性を明らかにする。【方法】(1)研究対象:A病院C病棟看護師30名中、同意を得られた看護師(2)データ収集方法:研究者よりUSの基本的知識の講義とIVCD計測のハンズオントレーニングで構成された教育プログラムを実施した。研究者が作成した意識調査、テストを前後で比較した。教育プログラム後、IVCD計測技術チェックリストの自己評価を依頼した。倫理的配慮としてA 病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。研究対象者には、本研究に参加するか否かを判断するのに十分な時間を与え、内容を良く理解したことを確認した上で、自由意思による参加の同意を文書で得た。【結果】参加・同意が得られたのは18名であった(回収率60%)。教育前はUS技術に対する不安が多かったが、教育後は知識不足による不安が多かった。また臨床的な判断が早くなり、正確なアセスメントに繋がるというメリットを挙げていた。テストは11点満点中、教育前は平均8.55点、教育後は平均8.72点だった。技術チェックリストでは、右心房や肝静脈を見つけ、IVCDを計測するに対して自己評価が低かった。【考察】実際にUSに触れ、正確にIVCD計測が行えたことで、不安の軽減につながった。また看護師のUSへの意欲・関心が高まり、USがフィジカルアセスメントへの活用に繋がることへの理解につながった。1度経験しても技術習得は望めないため、病態知識を深める講義とハンズオントレーニングは別々に行い、かつハンズオントレーニングの回数を増やすことが必要である。また不安軽減・正確性の担保・継続教育のため院内の臨床検査技師によるフォロー体制の構築が必要である。【結論】今回の教育では知識・技術獲得は至らなかったが、不安の軽減、看護師のUSを行うことへの関心の高まりに繋がった。USについての知識・技術獲得のためには教育の継続が必要であるため教育内容を充実させていく必要がある。