[口演54-4] ANSの相互支援体制と心理的安全性との関連の検討
~A病院の調査より~
【緒言】A病院においては201X年より独自の看護方式、アメーバ・ナーシング・システム(以後ANS)を導入している。この特徴は、小集団全員参加型により看護チーム内が相互支援できる体制の構築である。導入後、新型コロナウイルス罹患による看護要員の人員不足にも見舞われたが看護チームの相互支援体制により危機的状況は回避できた。これは、ANSの相互支援体制が心理的安全性に寄与したのではないかと考えた。そこでANSと心理的安全性との関連について検討する。【目的】ANSと心理的安全性との関連について検討する【方法】質問紙調査。対象はA病院に勤務する看護職員162(名。研究期間202X年4月から12月末日。調査内容は基本属性、ANSに関する項目①組織構造②情報の共有化③エンパワーメント④教育⑤リーダー育成⑥ワークライフバランス⑦フィロソフィー、職場の心理的安全性尺度(日本語版)測定。分析方法はSPSS24を用い、各質問紙の記述統計を行い「心理的安全性」を従属変数として、カイ二乗検定を行い有意水準は5%未満とした。倫理的配慮としてA病院の研究倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号ー2304)対象者へは研究目的、研究方法、研究協力は自由意志であり、参加を拒否しても不利益を受けない、得られたデータは本研究以外では使用しない、個人が特定されない、学術集会で発表することを説明し同意を得た。(心理的安全性とは自分の気持ちや意見を安心して表出できる状態と定義)【結果】アンケート回収率98%、心理的安全性の得点は、最高得点7点・最低得点2点、中央値は4.8、平均値は5.1であった。心理的安全性得点の高群の平均値5.8±0.6、低群の平均値3.6±0.6であった。組織構造、情報の共有化、エンパワーメント、ワークライフバランス、フィロソフィーの項目が有意に高く、教育及びリーダー育成の項目が有意に低かった。【考察】エドモドソンは、心理的安全性はチームや組織の現象としているがANSを構成する7つの項目のうち組織構造、情報の共有化、エンパワーメント、ワークライフバランス、フィロソフィーの5項目は、心理的安全性の現象として寄与していたと考える。つまり、小集団・全員参加型の組織構造、末端にまで伝わる情報の共有化、互いに支え合いながら自立/自律を促すエンパワーメント、家庭と仕事との調和を図るワークライフバランス、人の心を大事にするというフィロソフィーが心理的安全性をもたらしたと考える。【結論】心理的安全性に寄与していたANSの項目は、組織構造、情報の共有化、エンパワーメント、ワークライフバランス、フィロソフィーの5項目であった。しかし、有意差が見られなかった教育とリーダーシップについては、今後、人材育成を強化していかなければならないことが示唆された。