第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演55群 周術期の看護②

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第6会場 (大会議室A4)

座長:塚原 大輔

[口演55-3] タブレットでの術前オリエンテーション効果

従来のパンフレットと比較して

山田 真奈, 髙橋 美沙 (横須賀共済病院)

【緒言】 DVD活用による術前オリエンテーション(以下、術前オリ)の時間はパンフレットを用いた時間より短縮するとされているが、従来の方法と術前オリの効果を比較する報告は少なかった。そのため、パンフレットとタブレットの術前オリの効果を比較し、タブレットでの術前オリの有用性を明らかにすることで、術前オリの効率化と看護の質向上につなげたいと考えた。【目的】 パンフレット及びタブレットを用いた術前オリを比較し、タブレット使用の効率と看護の質への影響を明らかにする。【方法】 研究方法は評価研究でA病院外科病棟看護師約20名、手術を受ける患者約120名を対象とした。術前オリ後に術前オリの効果と時間などを問うアンケート調査を実施し、看護師へは調査期間終了後にも実施した。分析方法は項目ごとに基本統計量を算出し、パンフレット群とタブレット群で比較した(t検定、χ2検定)。倫理的配慮として、対象者へは文書と口頭で研究説明をし、個人が特定されないよう無記名のアンケートの提出をもって同意の確認とした。なお、本研究はA病院 臨床研究倫理審査委員会の承認を得た(管理番号23-39)。【結果】 アンケート回収数は患者用112件、看護師用114件、調査期間終了後の看護師用25件であった。患者の評価では全ての項目で有意差を認めなかった。わかりやすさや不安の軽減などの6項目で、1~5点の評定で平均得点パンフレット4.10点、タブレット4.03点であった。説明時間は両群ともにちょうど良いと90%以上が回答した。看護師の評価では、説明時間のみ有意差を認めた。パンフレット群11.65分、タブレット群4.94分と、タブレット群が有意に説明時間が短かった。調査期間終了後の看護師の評価では、均一な術前オリができる媒体はタブレットが60%、不安軽減につながる媒体はパンフレットが48%、今後使用したい媒体は併用が60%を占めていた。【考察】 術前オリの時間は先行研究と同様にタブレットが有意に短く、看護師の業務時間が短縮したと考える。その他の項目では有意差を認めず肯定的な評価であったため、両媒体とも術前オリの質は高く担保され、かつ術前オリの効果は説明時間の長さに由来しないことが示唆された。これは両媒体を併用したいという意見が多かったように、看護師が両媒体の強みを認識し、どちらを用いれば患者に効果的な術前オリとなるかアセスメントしていることが大きな要因となっていると考えた。【結論】 ・タブレットはパンフレットより術前オリの効率を高めることが明らかになった。 ・パンフレット、タブレットどちらも質の高い術前オリが可能であった。 本研究の限界はアンケートに協力できる者のみの調査結果で、手術を受ける全ての患者の実態を把握しているとは言い難いことである。そのため、今後は認知力の低下や言語・記述的なコミュニケーションが困難な方にとっても有用な術前オリの検討と評価が必要だ。