第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演55群 周術期の看護②

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第6会場 (大会議室A4)

座長:塚原 大輔

[口演55-5] ロボット支援前立腺全摘除術後患者の尿失禁予防への試み

キング健康質問票からみる術前介入の有効性

多田 直子, 土居 義弘, 森谷 明菜, 宮原 亜由加, 上山 麻緒夏, 神原 桃子, 宮本 佳治, 松原 美佐岐, 小森 政嗣 (高松市立みんなの病院)

【緒言】A病院は2021年よりRARPを導入した。RARPは侵襲が少なく早期回復や入院期間の短縮が期待できる一方、術後尿失禁が起こりやすくA病院の発症率も高い。術後尿失禁は生命を脅かす症状ではないが、QOLに大きな影響を及ぼすとされ術後尿失禁対策として骨盤底筋体操を指導していた。しかし短期間の入院で、「尿失禁が続く中での退院は今後の生活が不安」との声も聞かれ、現在の指導方法では術後尿失禁改善や精神的負担を軽減することが困難と思われた。先行研究でRARP後患者に対する骨盤底筋体操の有効性は報告されているが、術前介入の有効性を評価した研究は見当たらなかった。そこで今回、尿失禁に特化したQOL尺度であるキング健康質問票(以後KHQ)を用いて、術前から介入することの有効性を明らかにするため本研究に取組んだ。【目的】術後の尿失禁や対策などを術前から指導することの有効性を明らかにする。【方法】202X年7月から12月の期間にRARPを受ける患者を対象とした。術前指導群は手術3週間前の受診時に、独自に作成したパンフレットを用いて指導、術後指導群は術後膀胱留置カテーテル抜去後に指導した。退院3週間後の外来受診時に自記入式アンケートを実施。術前•術後の2群間をEZRを使用しウィルコクソン順位和検定法を行い、有意水準は5%未満とした。本研究はA病院倫理審査委員会の承認を受け、データの匿名性と守秘を遵守し、アンケートの回答を持って同意を得た。【結果】対象は70歳から86歳。術前指導群10名、術後指導群13名であった。KHQスコアは術前•術後指導群の比較において、全ての項目に有意差はみられなかった。また両群とも他の項目と比較して、排尿による「生活への影響」のスコアが高かった。さらに、術前指導群のアンケート自由記載からは「術前から教えてもらえたから孫が色々調べてオムツも準備してくれた」「妻が一緒に体操してくれた」など肯定的意見があった。【考察】少量の尿失禁であっても生活の上で不安や煩わしさは伴い、トイレの所在なども行動を制限するものとなるため、術前•術後ともに「生活への影響」のスコアが高かったといえる。指導を行うタイミングの差はないが、術前指導群に肯定的意見があったことは、術前から家族を巻き込み、がん治療に対して、ともに立ち向かえる糧になると言える。退院後3週間という期間では、骨盤底筋体操の効果が得られたかどうかの判断までには至らなかったが、効果的な骨盤底筋体操の継続をするという上では入院中に理学療法士と協働し効果的な骨盤底筋体操が習得化できるような教育支援が必要であると考える。【結論】KHQにおける退院3週間後の2群間比較は全てに有意差はなかった。術後尿失禁対策や骨盤底筋体操の指導など、家族との協力体制が図れるよう、今後も術前からの関わりや効果的な骨盤底筋体操の習得に向けた支援が必要である。研究期間と症例数の少なさは本研究の限界であったと考える。