第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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口演

口演57群 療養環境の整備

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM 第8会場 (中会議室E1+E2)

座長:岩部 仁

[口演57-3] 入院患者の「ADL評価・伝達表」の作成と有用性の検討

髙比良 能行1, 堀 宗一郎1, 大里 英子2, 本田 倫子1, 岳下 晶子1, 勝野 久美子1 (1.長崎北病院, 2.(前)長崎北病院)

【背景】A病棟では脳神経内科疾患患者が多く、日常生活動作(以下ADL)の介助は、細かく異なる方法で実践される。ADL評価の既存のフォームでは、具体的な自立度状況や介助方法を伝達することが困難な場合がある。【目的】看護師がADLを同じ視点で具体的に把握し情報伝達・共有できるよう、新たにADL評価・伝達表(以下ADL表)を作成した。ADL表の有用性の検討を目的に、ADL表の活用状況と評価結果の分析を試みた。【実践内容・方法】1.実践内容:ADL表を食事・移乗・口腔ケア・排泄・入浴・更衣・内服の7項目で構成し、各項目の自立度を自立(5点)~全介助(0点)で評価(35点満点)。各項目に介助方法や使用物品等のチェック項目を設けた。病棟看護師に受け持ち患者のADL評価に活用してもらった。2.調査方法 1)活用状況調査:病棟看護師23名を対象に、ADL表の評価・活用について質問紙調査を実施。活用前後でADLの情報把握、ADL表の活用状況等について質問した。2)ADL表得点の分析:ADL表を用いて評価した患者72名の評価結果を集計。ADL表の合計得点と項目別得点傾向について分析した。3.倫理的配慮:調査対象者には、ADL評価活用前に目的・方法を書面にて説明し同意を得て実施。データ管理においては、コード化し個人が特定されないよう配慮した。【結果】ADL表活用前の質問紙調査では、ADLを「実際の患者」から把握するが45%と最も多く、「看護記録からADLを把握することが困難」67%、「看護サマリでADLを伝えることが困難」76%であった。活用後の調査では、「ADL表で把握ができた」84%、「ADLの評価が容易になった」95%、「具体的な内容を伝えることができた」95%であった。また、活用場面については、①転棟時の申し送り、②看護サマリの作成時、③カンファレンスが多くを占めていた。ADL表の合計得点は、平均21.0点で、項目別の平均得点は、食事3.8点が最も高く、口腔ケア、移乗、排泄、入浴、内服、更衣の順であった。対象患者の疾患を神経難病、脳卒中、その他の3群に分けて比較すると、合計得点は、神経難病21.6点、脳卒中18.8点、その他疾患22.0点で、脳卒中の得点が低かった。【考察】ADL表活用前は、ADLの把握・伝達に多くの看護師が困難を感じていたが、活用後は、「把握が容易になった」「具体的に伝えることができた」が9割を超えた。ADL自立度のレベルを具体的な表現で示したことや使用物品のチェック項目を設けたことで、これまでより評価しやすく情報共有しやすい評価表となったと思われる。疾患群別の比較では、脳卒中のADL自立度が低い結果となったが、麻痺による運動障害によりADLに与える影響が大きかったと考えられ、疾患特性が読み取れた。【実践への示唆】作成した「ADL評価・伝達表」は、ADL自立度の長期的な変化や項目別評価の推移をみることができ、情報把握の効率化・共有化に有用である。活用範囲を拡げ、退院支援や地域連携時の情報共有に活用したい。