第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

講演情報

口演

口演7群 キャリア支援

2024年9月27日(金) 14:15 〜 15:15 第7会場 (中会議室B1+B2+B3)

座長:南里 玲子

[口演7-4] A病院クリニカルラダーにおけるキャリア形成支援

目標設定を用いた研修の取組み

石澤 緑, 大島 由美, 池田 幸子, 二階堂 名奈, 天沼 紗織 (伊藤病院)

【背景】A病院は60床の急性期病院である。就業する看護師の年齢構成は30代~40代が87%を占めており、平均勤続年数は10年7ヶ月である。管理職が看護師に対し定期的に目標管理面接を実施し、個々の目標実現のために支援をしているが、目下の課題が個人目標に設定されており、クリニカルラダーに沿ったキャリアを見据えた自己実現のための目標設定ではない現状があった。そこで、看護師自身があるべき姿・なりたい自分を想像し、その実現に向けて主体的に行動するための研修を実施した。【目的】看護師のあるべき姿・なりたい自分とその課題を明確にし、思考過程を整理しながら達成に向けて主体的に実践ができる【実践内容・方法】対象者:A病院ラダーⅢ22名実践期間:202X年9月~202Y年3月方法:研修の流れ 目標・課題・問題の定義を理解するための動画視聴を行い、オリジナルのワークシートに沿って事前課題を実施。その後2回のグループワークで、メンバーと意見交換しながら自身の課題を明確化する。個人目標を立案し、各自が目標達成に向け1年間活動し、年度末に実践報告会を行う。倫理的配慮:個人が特定されないよう匿名化し、学会で報告することを対象者に書面で説明し同意を得た【結果】対象者の目標は、リーダーシップに関連する内容が最も多く、次いでコミュニケーション、自身の役割に関連する内容という結果であった。研修では個人でラダーの到達レベルと現状、なりたい自分を整理した後、グループワークで共有した。意見交換を重ねることで、思考過程が整理され、自身の目標が明確となり、より具体的な目標設定がされるようになった。しかし、各自が思い描く目標と、組織が各自に期待するレベルに相違があり、修正が必要な看護師もいた。実践では、目標はなりたい自身の姿であり、成長に繋がるため、各自が主体的に計画を実行することができていた。グループワークでは、「自分の課題に気づけた」「他部署の人と目標について話す機会がなかったが、他者の考えや悩みなどを聴くことで良い刺激をうけた」などの意見があった。【考察】管理職による目標管理面接では、将来の看護師としてのキャリアについてどのように思い描いているか確認をしているが、それを具体的に整理して個人目標に繋げられている看護師は少数であった。そのため、本研修において課題を明確にする作業は、自己のキャリアを見つめ直す機会になったと考える。思考過程を整理したことで、あるべき姿・なりたい自分を明確にすることができ、自己実現に向けて具体的な計画が立てられたと考える。また、他者と共有することによって、新たな気づきや良い刺激が得られ、内発的動機付けによって主体的な行動に繋がったのではないかと考える。【実践への示唆】看護師個々のなりたい自分と、組織が期待する人材育成の方向性のすり合わせが重要であることから、思考整理の段階で管理職の介入が必要と考える。