第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター30群 糖尿病の人への支援

Sat. Sep 28, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:遠藤 和子

[ポスター30-2] 糖尿病内科外来患者の足爪白癬の実態調査

和田 真知子, 大川 佳津美, 三原 恵 (川崎幸クリニック)

【緒言】日本皮膚科学会ガイドラインでは、糖尿病潰瘍の発症や悪化を予防するため足白癬や足趾爪白癬の治療を行うことを推奨している。糖尿病外来患者を対象とした足爪白癬についての調査は少なく実態を明らかにしたいと考え研究に取り組んだ。【目的】A診療所糖尿病外来患者の足爪白癬診断の有無の割合、患者背景との関連、足爪白癬治療経過とそこに至った理由を調査し明らかにする。【方法】選択的回答形式の質問紙を作成し糖尿病外来患者894名に20XX年Y 月~Z月(9週間)調査を実施した。足爪白癬診断の有無と患者背景との関連についてクロス集計を行いχ2検定・t検定・Welch検定で分析、p<0.05をもって有意差ありとした。A診療所研究倫理委員会の承認を得た(承認番号倫24-1)。【結果】有効回答839名。研究対象者の概要は、男性583名・女性256名、年齢63±13.7、HbA1c7.2±1.0、BMI26.3±4.8。足爪白癬と「診断された事がある」135名(16.1%)、「診断された事がない」692名(82.5%)、「わからない」12名(1.4%)だった。足爪白癬と診断された事がない患者692名のうち、足爪白癬が疑われる症状があったのは256名(36.9%)であった。足爪白癬診断の有無と患者背景との関連では、年齢、糖尿病罹病期間、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、足の神経症状(足先の感覚が鈍い、足の裏に紙が貼りついた感じ、足がつる)に統計学的有意差があった。治療経過とそこに至った理由で最も多かった回答は、現在継続中42名は「糖尿病があるから治したい(22名)」、医師から治ったと言われた34名は「人に移す可能性がある(18名)」、自分で治ったと判断した35名は「症状がなくなった(20名)」、治っていないが治療中断している24名は「効果を感じなかった(7名)」であった。治癒までに必要な期間に対し分からないと回答した患者は74.1%だった。【考察】足爪白癬と診断された事のある患者は2割未満で本研究開始前の予測より少ない結果だった。2007年の潜在罹患率の大規模調査で仲らは、日本人の4人に1人が足に何らかの白癬を有し、5人に1人が足白癬、10人に1人が爪白癬に罹患していると推測されると述べており、本研究でも診断されていない患者の約3割に足爪白癬が疑われる症状があることから、実際の足爪白癬罹患患者は調査結果より多いと推察される。糖尿病を有する患者背景では、7項目で統計学上有意差がみられ、足爪白癬診断の有無に影響を及ぼす関連因子が示唆された。足爪白癬治療経過は、治療の必要性、足病変のリスク、治療期間や治癒の目安を患者が理解できているか否かが治癒まで通院を続けられる重要因子であると考える。【結論】糖尿病外来患者で足爪白癬と診断された患者は予想より少なかったが、足爪白癬を有する潜在患者の可能性が示された。糖尿病患者背景には足爪白癬診断の有無に影響を及ぼす因子がある。患者の足爪白癬の認識は治療経過に影響を及ぼす事が示唆された。