第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

ポスター

ポスター48群 精神看護②

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:屋嘉比 浩子

[ポスター48-3] 精神科病院における摂食嚥下障害への関わり

胃瘻造設後に経口移行した事例を通して

伊藤 絵美 (慈雲堂病院)

【背景】 A病院は精神科単科病院の中でも、精神科慢性期、合併症、認知症病棟の割合が多く、近年では入院患者の高齢化も進み、精神看護に加え身体的な看護ケアが増加している。認知症による摂食嚥下障害の増加、精神症状による生活行動への介入の困難さ、抗精神病薬による薬剤性嚥下障害なども重なり、さらに介入が難しい状態にある場合が多い。A病院にて、統合失調症の無為自閉による食欲低下により胃瘻造設した高齢者に対して,摂食嚥下障害看護認定看護師として、NST、主治医、病棟看護師と連携し摂食嚥下リハビリテーションを実施することで摂食嚥下機能が回復した事例をここに報告する。【目的】 胃瘻造設後の統合失調症の高齢者の摂食嚥下機能の回復に向け多職種と実践した取り組みを振り返ることで今後の看護実践に役立てるものである。【看護実践内容・方法】 B氏は80歳代の患者で、15年前より統合失調症で入院後、精神的要素にて食欲不振が続き、胃瘻造設となり、数年が経過していた。ご本人より「アイスクリームが食べたい」と訴え始めた為、病棟看護師より嚥下評価の依頼があった。全介助であったが、初回嚥下評価は唾液嚥下可能、RSST実施不可、MWST:4点、頸部聴診上、口唇閉鎖可能で咽頭残留音なく、水トロミの直接訓練から開始した。介入直後より歯科衛生士と義歯の不具合、管理栄養士と栄養状態評価と食事形態、作業療法士とは姿勢や訓練の相談、精神科医や薬剤師とは内服薬の状況の相談などを定期的に意見交換を行い、病棟看護師の日々のケアに繋げた。嚥下内視鏡検査で、咽頭収縮力低下と嚥下反射惹起遅延を認め、梨状窩に唾液の貯留が観察されたが、アイスクリームは、うなずき嚥下とゼリーと交互嚥下することで改善を確認した。嚥下内視鏡結果をもとに、嚥下体操、アイスマッサージやおでこ体操を実施した。A病院の研究倫理委員会の承認を得た。(承認番号A-240311)発表にあたり患者の個人情報の保護とプライバシーの保護に配慮し、家族から書面にて同意を得た。【結果】 アイスクリームが食べられたことで次は「鶏肉が食べたい」と自発性向上も見られた。介入後8か月目で摂食・嚥下能力のグレードでは、経口摂取不可のGr.3から経口のみのGr.7まで能力が向上した。【考察】 専門的な介入において、多職種がお互いを尊重した関わりやフラットな連結ができるように、多職種連携の中心となり橋渡ししていく役割が認定看護師には必要であり、実践できたと考える。野中は「連携を実践するうえで最も重要なのは目的・目標の共有である」と述べている。患者の希望に沿い援助目的を明らかにし、目標を定めるため議論を深めることが必要で、看護師が中心となってケアし、繋いでいく必要がある。【実践への示唆】 嚥下機能が保たれていても、精神的要因で食事行為が成り立たないことが多い。今後も多職種と連携し健康的な部分を引き出せる関わりをしていきたい。