第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

ポスター

ポスター48群 精神看護②

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:屋嘉比 浩子

[ポスター48-4] 統合失調症で水中毒の在宅療養者の母の思い

ヒストリカルブックを作成して

関森 紀子, 坂本 正美 (公立能登総合病院)

【背景】A氏は統合失調症で水中毒による心不全で入院治療後、在宅療養を再開した50歳の女性である。長期間の訪問看護の関わりから在宅療養管理が難しいと考えていたが、介護者の母より、「怖い思いをしたし、今度こそ頑張らんとね」と前向きな言葉が聞かれ、今後の在宅療養への思いや言動に変化を感じた。【目的】介護者である母に焦点を当て、娘の生命を守るための行動に至るまでの思いを明らかにする。【実践内容・方法】B病院の倫理審査委員会の承認を得た。独自で作成したインタビューガイドをもとに半構造化面接を行った。1回目の面接は、母の思いや経過を聞き、内容を整理しヒストリカルブックを作成した。ヒストリカルブックとは出生後から年齢・イベント・その時に感じた思いなどに焦点をあて分脈を整理したものである。2回目の面接は、ヒストリカルブックの内容を共に確認し1回目面接後の母の心境の変化や思いの振り返りを行った。【結果】1回目の面接では、「幻聴に左右され、自宅アパートから飛び降りた時も生きた心地しなかった」と、娘が20歳代より対人関係トラブルや精神世界にのめり込み、自分を見失った時期があり、怖かった様子や衝撃的な出来事を語られた。これまでにも温熱療法・食事療法・ヒーリング治療など母親として娘の健康ため、病状を悪化させないように思い行動した様子を語った。母は今回の水中毒での娘の入院は、2度目の生命の危機的状況と捉えていた。状態が悪化する中、母の治療への勧めに応じてもらえず「病院受診を受け入れないのであればしょうがない。人の命には限りがあり、これも運命かと思った。」と、自宅での看取りも覚悟された。その後娘が入院を受け入れ病状が回復したことで、生命の危機を乗り越えることができたのだから、もう一度頑張ってみようという決意が見られ、退院後の在宅療養を見直し環境調整と生活改善に取り組んだ。しかし再診後は気のゆるみ、食事や生活リズムが自己流へ戻ってしまい、生活指導を継続できないジレンマや葛藤など、娘の健康を気遣い行動を起こした思いを一気に語り続けた。2回目の面接では、これまでの出来事を思い返し、感情があふれ涙を浮かべた。「話したことで振り返りができすっきりした、後悔ない、娘のおかげで色々勉強させてもらった、自身の成長の為に生まれてきたのかなと感じています」と、母は静かに語られた。【考察】母は娘の健康への思いから、無理に逆らわず、精神症状や気分、調子に合わせて見守るなど、病状に応じた対応を経験的に学習していた。またヒストリカルブックを用いて視覚的に思いを整理したことで、母がこれまでの自身の対応や療養生活を肯定的に捉え、自己肯定感の向上につながったと思われる。【実践への示唆】ヒストリカルブックを作成し、一緒に振り返り視覚的に整理したことで、母の思いを明らかにでき、新たに治療や介護への意欲や意識が高まると考える。