第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター49群 介護・福祉関係施設等における看護

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:山川 将人

[ポスター49-2] 園芸活動に取り組んだ療養病棟看護師の思い

―生活歴を活かした関わりから―

湊 ゆきの, 森田 祐子, 野澤 有代, 藤田 理恵 (北陸中央病院)

【緒言】療養病棟は慢性疾患を抱えた患者が長期入院しており、生活の場としての役割がある。そこで患者から聴取した生活歴から園芸活動を取り入れた。園芸活動は患者の認知機能面での効果がある、と先行研究で報告されているが、それに関わる看護師を対象とする報告はない。【目的】園芸活動の取り組みにおける療養病棟の看護師の思いを明らかにする。【方法】研究期間は202X年7~9月。研究方法は質的記述的研究とし、同意を得られた看護師に半構成的面接後、逐語録を作成しコード化・カテゴリー分類した。A病院の倫理委員会で承認を得て(承認番号第23013)、本研究の趣旨と自由意志による同意、途中辞退の権利、匿名性の保護、得られた情報は研究目的以外に使用しないことを文書と口頭で説明し同意書の署名をもって同意を得た。【結果】対象者は3名、看護師平均経験年数は28年(SD12.6)、療養病棟平均経験年数は3.5年(SD1.9)であった。看護師の語りを分析し、カテゴリーは《病状変化していく中でも何かしてあげたい》《看護業務に追われ生活歴への意識の希薄》《園芸活動ならではの関わりから実感した効果》《看護師自身の心のケアにつながる》の4つ、サブカテゴリーは〈きっかけがあれば何かしてあげたい〉〈生活歴を活かした看護ができていない〉〈生活歴まで意識が向かない〉〈病状変化からタイミングを図る必要性〉〈患者とのコミュニケーションが豊かになる〉〈患者の新たな一面を見た喜び〉〈患者との関わりから得られたものがある〉〈園芸活動から見出す患者への効果〉〈看護師自身の満足〉の9つが抽出された。【考察】看護師の語りから、看護師は患者が病状変化していく中でも何かしてあげたいと思っていた。しかし業務に追われ、生活歴を活かした看護ができていないと感じていた。療養病棟では、長い経過を辿る患者の身近な存在として寄り添う看護が必要であり、生活歴を把握し患者の理解を深めた上でその人らしさを大切にした関わりが重要であると考えられる。今回、生活歴を活かした園芸活動に取り組み、看護師は患者との充実した会話や生き生きとした表情から、園芸活動ならではの関わりによる変化を実感していた。それと同時に、患者に寄り添う看護を実践できたことが看護師の満足感となり、看護師自身の心のケアにつながると感じていた。これは、園芸活動を通して看護師と患者の双方に相乗効果をもたらし、看護実践の上での好循環が生まれたと考えられる。【結論】生活歴を活かした園芸活動の取り組みにおいて、患者に寄り添う関わりから、看護師は患者の本来の力を引き出す効果を実感すると共に、看護師自身の心のケアにつながる相乗効果があることが示唆された。研究の限界は、一施設での結果であり一般化は難しいことである。今後、患者の生活歴を活かしたケアを定着させ看護の質の向上につなげることが課題である。