第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター49群 介護・福祉関係施設等における看護

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:山川 将人

[ポスター49-4] 化粧療法が要介護高齢者の認知・心理機能に与える影響の検証

松井 加世子, 澤見 一枝 (奈良県立医科大学看護学研究科)

【緒言】高齢者の「化粧療法」とは、心身機能やQOLを向上させ、健康長寿をめざすものとされ、近年注目されている。化粧療法の比較研究では、化粧実施群の身体・認知・精神機能が高いことが報告されているが、研究数は稀少である。このような背景から本研究では、化粧療法の前後比較によって心理と認知効果を検証し、認知機能に影響する決定要因を検討することを目的としている。【目的】通所介護サービス利用者を対象に、化粧療法の介入群と非介入群に分け、認知テスト、心理スケールの前後比較を行い、化粧療法の効果を明らかにすること。また、認知得点と心理尺度の相関を回帰式の決定係数によって検証すること。参加者の語りの分析から心理的な変化を明らかにすること。【方法】通所介護サービス施設で月1回、60分の化粧療法を3回実施した。初回の介入前と3回目の介入後に認知テスト(集団式松井単語記憶テスト即時再生・遅延再生、山口漢字符号変換テスト、語想起テスト)、心理尺度(主観的幸福感尺度、5段階のリッカートスケール:化粧療法の興味・生活の楽しさ・健康感・人生の満足度・自信)を調査した。前後比較はWilcoxonの符号付順位検定を実施し、認知と心理の相関には相関係数と回帰式における決定係数を用いた。参加者の語りは定性的に分析した。本研究はA大学の医の倫理審査委員会の承認を得た(承認番号3494)。対象者には個人情報の管理、研究データは匿名化すること、学会等で発表することを書面で説明し、同意書をもって同意を得た。【結果】介入群、対照群ともに登録者は8名で合計16名、すべて女性で、平均年齢は86.7±4.6歳だった。前後比較可能な有効回答数は介入群5名、対照群3名を比較した。認知機能とリッカートスケールは、どちらも統計的に有意差はなかったが、主観的幸福感尺度の合計点は、介入群が33.7点から36.4点に有意ではないが上昇した(n=8)。認知得点と心理得点の相関は、従属変数を即時再生得点として、ここ数年間の幸福度=0.4で、成功したと感じる程度=0.6であった(n=16)。成功感の程度との回帰式における決定係数は、0.3であった。従属変数を語想起とすると、成功感の相関=0.4であった。遅延再生と心理の相関は無かった。参加者の語りでは、〈嬉しさ、楽しさ〉〈綺麗、若返った〉〈待っている間の期待〉〈昔の回想〉〈見せたい、自信〉の5つのカテゴリーに分類された。【考察】高齢者の化粧療法では、身体・認知・精神機能の向上が示唆されている。本研究では、有意ではないが主観的幸福感が向上し、認知得点では、即時記憶と成功感の程度の相関が最も高く、決定係数の当てはまりは高くなかったが、成功感覚の重要性が確認できた。語りでは、自信や楽しさが向上していた。【結論】化粧療法による心理機能へのプラスの影響が示唆され、認知と心理の相関が確認された。研究の限界は頻度と期間であり、今後それらを増やして実施する。