第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

Presentation information

ポスター

ポスター50群 出産・育児への支援

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:濱嵜 真由美

[ポスター50-2] HIV感染母子の支援体制

全国調査25年間の結果を考察する

伊藤 由子1 , 2, 吉野 直人2, 高橋 尚子2, 杉浦 敦2, 喜多 恒和2 (1.鈴鹿病院, 2.厚生労働科学研究費補助金エイズ対策政策研究事業「HIV感染者の妊娠・出産・予後に関するコホート調査を含む疫学研究と情報の普及啓発方法の開発ならびに診療体制の整備と均てん化のための研究」班)

【緒言】A研究班では、HIV感染妊産婦とその出生児についてのデーター集積、啓発活動、診療体制の整備等HIV感染母子に対する支援を行ってきた。HIV感染症の治療薬の発展、分娩様式も選択的帝王切開から経腟分娩の検討もされ、HIV感染母子を取り巻く環境も変化をしており、25年間の調査結果を振り返り再考することは今後の母子支援に有効であると考える。【目的】HIV母子感染全国調査では妊婦HIV検査率や症例数に加え、HIV母子感染に関連する質問を199X年から毎年行っている。全国調査開始から25年を振り返り質問項目をHIV母子看護管理の視点から後方的考察することで、今後のHIV母子感染予防対策と感染者への支援の充実を図る。【方法】これまでの質問項目を集積・整理し、当時の母子感染対策と支援を再考した。【結果】25年間の平均回答率は74.4%だった。調査開始当初の妊婦HIV検査率は73.2%だった。母子感染関連病原体の検査率と比較するため、途中から関連病原体の検査率を調査した。当時HCV検査率は94%で、これをHIV検査率の数値目標として情報発信を行った。必要時には妊婦にHIV検査を行わない理由を調査し、検査の必要性を啓発した。14年後にはHIV検査率は99.9%に上昇したが検査偽陽性の頻度も高まり、検査陽性時の妊婦への対応を調査し問題提起した。調査中には妊娠初期検査陰性例で中期・後期・授乳期での感染による母子感染が散見されたため、妊娠後期でのHIV検査状況、未受診妊婦に関する調査も実施し、HIV検査の徹底と再検査の必要性についても啓発している。COVID-19パンデミック時には、HIV感染妊婦の診療における影響を調査したところHIV感染妊婦の診療には影響がなかったことが明らかになった。【考察】調査開始当時は、HIV抗体検査結果で陽性となった場合は患者のみならず医療者もパニックになることもあった。HIV感染症の理解と共に検査が一般的に実施されるようになり、分娩期での母子感染予防対策が取れるようになった。分娩時での母子感染は回避できたが、その後の育児中に母子感染する例もあり、継続的な支援体制の構築、小児科・地域との連携が必要と考える。また、未受診、COVID-19流行など周産期領域で問題となっている事象についてもHIV診療にも影響を及ぼすため、問題を早期にとらえ対応の検討も重要課題と考える。【結論】HIV感染母子支援を構築するためには、今後も医療の現状を加味した全国調査を継続し、現状の把握が必要である。