第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター50群 出産・育児への支援

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:濱嵜 真由美

[ポスター50-3] 新型コロナウイルスに罹患した褥婦の帝王切開後の心理的変化

山端 莉加, 上田 夕香子 (鹿児島大学病院)

【背景】 2020年にWHOは新型コロナウィルス感染症(以下、COVIDと略す)の感染拡大についてパンデミック宣言を出し、我が国でも緊急事態宣言が発令され多数の感染者が発生した。パンデミックに伴いA県産婦人科学会では、感染妊婦が出産期に達し次第、原則として帝王切開分娩をするという方針が示された。COVID-19に罹患し帝王切開分娩をした褥婦は、危機的状況の心理的背景が明らかにされていない。【目的】 今回、COVID-19に罹患し帝王切開を受けた褥婦の危機的状況における心理的変化を明らかにする。【実践内容・方法】 202X年1月から10月にCOVID-19に罹患しA病院B病棟で帝王切開を受けた患者6名である。医師の診療記録、看護記録より緊急入院から帝王切開までの心理的変化に関連する言動の変化を抽出しデータとした。データはフィンクの危機モデルの「衝撃」「防御的遂行」「承認」「適応」に分類し、Steps for Coding and Theorization(以下、SCATと略す)を用いて分析した。本研究は、A病院の研究倫理新委員会の承認を得た(承認番号2023-9)【結果】 SCATを用いてインタビューデータを分析した結果、31個の構成概念が生成された。 衝撃の段階では、COVID-19に罹患し緊急帝王切開となり、出産後の隔離下による母子分離により不安や孤独感を有していた。 防御的遂行の段階では、無事に出産できた児の愛着から会いたいという強い願望があった。しかし、自己実現が叶わず自己否定に陥ることがあり、理想的な子育てへの希望を語った。 承認の段階では、自宅にいる子どもや生活面への不安が生じていた。また、児へ会えないことへの自責感、今後の育児への不安や授乳への懸念が生じていた。 適応の段階では、無事に出産出来た喜びや隔離解除後に児に会える喜びと期待があり、前向きな気持ちが生じていた。【考察】 通常の緊急帝王切開とCOVID-19に罹患し緊急帝王切開を行った褥婦の衝撃の大きさは、母子分離や隔離などが加わったことでさらに増強したと考えられる。また、帝王切開直後、孤独感や今後の育児への不安を抱いていたが、隔離解除後に児と対面することにより、前向きな気持ちが生じていったと考える。【実践への示唆】 本研究は「衝撃」「防御的遂行」「承認」「適応」と心理的変化をみられたが、通常の帝王切開との比較については限界がある。今後、未知の感染症や児との面会制限が生じるなど危機的状況にある患者に対し看護実践をする必要がある。