第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター50群 出産・育児への支援

Sun. Sep 29, 2024 9:00 AM - 10:00 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:濱嵜 真由美

[ポスター50-4] 産後の支援者がいない妊婦への援助

涌嶋 嘉子, 濱田 恵美子 (千船病院)

【緒言】近年、核家族化と少子化が進み、家族や地域社会との関係が希薄化し、育児に関わる母親を取り巻く環境は大きく変化している。妊婦自身が自らの成長過程で乳児と触れ合う機会が無く、また産後の育児支援者を得られない事で育児不安を感じることがある。助産師が妊娠期から産後に向けて支援を行うことで、妊婦が安心して育児に取り組めると考え、本研究に取り組んだ。【方法】本研究は事例研究である。対象者には個人が特定されないように匿名化することと情報管理について、また、学術集会で症例報告として発表することを書面で説明し、同意書をもって同意を得た。事例はA氏20歳代女性、初産婦である。妊娠31週の妊婦健診からパウロ・フレイレの「傾聴‐対話‐行動アプローチ」で介入した。【結果】産後の支援者がいないことを主訴に助産師と面談した。第1段階は、妊娠31週に患者が感じている課題を理解するために傾聴を行った。A氏「夫が単身赴任で産後が不安です。母が近隣にいるが仲良くない。妹は手伝ってくれると思う」助産師「母は妊娠を知っているか、妹は具体的に何を手伝ってくれるのか」A氏「母は妊娠を知っている。妹は近隣に住んでいるので何かしてくれるはず」助産師:産後の支援が得られるかは不明である。第2段階は、妊娠33週に課題とともに解釈していくために、第1段階で明らかにされた課題についての対話を発展した。A氏「母と半年ぶりに話した。母は『孫に会いたい手伝いに行ける』と言っていた。たばこを吸うから来ないでと言うと『たばこは辞めた』とそれなら来てもらおうかと悩む」と話された。第3段階は、産後入院中に、問題解決のための対話から想起された課題についてポジティブな変化をもたらすように働きかけた。A氏「夫は産後2週間くらい帰省するが、その後は家に居ない。母も妹も会いに来るだけなので、一人で育児するなら色々試したい。産後ケアなど申し込みたい」と発言があった。【考察】A氏の問題を明確にするために対話を行った。当初A氏が感じていた「産後の支援者がいない」という問題以外に、家族と対話ができておらず、関係性が希薄であることがわかった。家族と話す機会を設けた事で、A氏は自身の気持ちと母の気持ちを知ることができた。支援者がいないと感じるのは、母と対話ができておらず、まずは母と話をする必要があった。介入したことでポジティブな結果につながり、「母に来てもらおうかと思う」「産後ケアを申し込みたい」という発言ができた。これは、A氏と母との関係性が変化し、A氏が自己で課題に気づき対処することができたと考える。【結論】産後支援者がいないと悩む人は今後も増えると思われる。妊婦が持つ力を引き出し支援するために、信頼関係を築き、傾聴‐対話‐行動によるアプローチを行うことが重要である。