[ポスター57-5] 伝達麻酔下手術における疼痛に対する恐怖がある患者への看護
【背景】A病院は、年間約8000件手術を行い、その中でも区域麻酔での手術が年間約3000件である。区域麻酔の局所麻酔・伝達麻酔は当日入院の為、術前訪問が実施できず手術当日に初めて患者と対面する場合が殆どである。本事例は、以前舟状骨骨折に対し伝達麻酔下手術を行い、疼痛コントロール不良で苦痛を伴った経験から、伝達麻酔下手術への恐怖心が強く、今回の腱板断裂手術では全身麻酔を希望したが、医学的観点より伝達麻酔が妥当であると医師より説明を受け手術に臨んだ。発表にあたり、患者の個人情報とプライバシーの保護に配慮し、家族から口頭にて同意を得た。【目的】伝達麻酔下手術における患者の疼痛に対する恐怖心を軽減することができる。【実践内容・方法】①手術当日に入院の為、術前訪問の時間を調整し、手術に対する思いや希望を聴取②手術開始と同時にスマートフォンを利用した動画視聴ができるように手術室の環境を整備③痛みの訴えが出た時に迅速に対応するために鎮痛薬を数種類用意④術前に医師に鎮静目的で使用する薬剤の流量と開始のタイミングを確認し、①~④のプランをチームで共有した。【結果】手術当日、患者はスマートフォンとイヤホンを持参し、手術開始と同時に装着し「これなら周りの音が気にならない」と笑顔が見られた。手術開始から1時間経過した時に疼痛の訴えがあり、準備した薬剤の種類や流量を変更しながらコントロールを行い1時間50分の手術は終了した。術後訪問時に「手術中に映画を見て気も紛れた。途中から痛みはあったが、痛み止めや眠る薬を使って寝たからすぐに痛みはなくなった。」と話された。【考察】今回のように、情報収集を行って患者の痛みに対する恐怖心を軽減するための環境への配慮や鎮静剤の使用など、可能な限り患者の希望する痛みを感じない状態にするためのプランをチームで検討し、共有することは重要である。看護師は患者の代弁者でもある為、会話の中で患者の思いを聞き取り、そこにある不安を1つでも軽減できる看護を考え実践していく事で、患者が安心して手術へ臨むことに繋がると考える。【実践への示唆】当日入院患者に対し、事前に術前訪問の時間を作ることは困難であるが、入室から麻酔導入までの少しの時間でも手術に対する思いや希望を聞き、実現可能なものかどうかチームでプランニングしていく。また、外来で術前説明用紙に沿って説明するなど、手術室看護師として、術前の介入や訪問の在り方を考えていく必要がある。