[ポスター60-5] 介護者役割がある中年期がん患者への退院支援
【背景】中年期では、社会的にも家庭的にも様々な立場で重要な役割を果たすことが多い。家庭内の役割として親の介護が必要となり、介護者役割のキーパーソンを担うことがある。介護者役割があり、がん治療をすることは身体的、精神的にも負担が大きい。今回、介護者役割を担う中年期のがん患者に対し、自身も要介護状態となり複数の退院困難要因がある中で退院支援を実践した症例報告をする。【目的】介護者役割を担う患者自身が介護状態となり、多数の自宅退院困難要因に対し、介護保険を導入、療養先を選定し退院に至った1症例を検討し振り返った。【実践内容、方法】50代女性A氏、子宮体癌ⅣB期。試験開腹術及び化学療法1コース実施し自宅退院後、1週間でトルソー症候群、多発脳転移、髄膜播種のため再入院となる。再入院時は左不全麻痺及び構音障害を認め、ADLは全面的であった。初回入院時より、自宅退院へは複数の困難要因が生じていた。患者家族背景は、未婚で独居、両親は要介護状態で介護者役割あり、他に頼れる親族もない。左不全麻痺発症後は、患者自身が要介護状態となり、自宅退院は困難と判断した。これらより、初回入院時より治療や療養先についても検討が必要と考え、院内の社会福祉士(以下MSW)と連携し支援を検討した。その結果、第2号被保険者として介護保険を導入し、退院先を住居型有料老人ホームに選定した。担当ケアマネージャーや施設職員と情報共有し、また抗凝固薬皮下注射の医療処置の必要性があること、脳梗塞の既往があることから体調変化時は医療者による評価が必要と考え、在宅医と訪問看護を導入した。倫理的配慮について、A病院倫理審査委員会基準では症例報告は倫理審査対象外であった。所属部門の看護部倫理審査会の承認を得て、また個人が特定できないよう匿名記載をし配慮を行った。【結果】施設への退院についてA氏から「一人でないから安心です」と表出あり、本人及び両親の社会資源調整後に退院された。外来通院時、施設での生活について確認すると、「友人と面会したり、買い物に行ったり、施設にある喫茶店にも行けるからよかった」と笑顔で話された。【考察】 これまで介護者役割を担う患者、中年期のがん患者への介護保険を検討する機会が少なかった。本症例では、本人の意向を確認しながら退院支援に関わる専門職種と複数回のカンファレンスを行い、早期に退院先が選定され本人の望む退院支援につなげることができたと考える。【実践への示唆】 がん治療を受けながら介護者役割を担う患者は多くいるが、これまで高齢者への支援が多く、介護者役割がある中年期患者への支援についてはあまり実践する機会がなかった。今後は本症例を元に、生活状況や病状などを総合的に判断し多職種と連携し適切に支援を検討し、患者・家族が望む退院支援を実践していきたいと考える。