第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター61群 心不全の人への支援

Sun. Sep 29, 2024 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (展示ホール)

座長:印東 真奈美

[ポスター61-3] 心不全手帳を活用した指導の認識と実態調査

阿部 美紀, 鈴木 多加世, 鈴木 由美子 (太田西ノ内病院)

【緒言】令和2年(2020年)の日本における心不全患者数は約120万人と推定され、2035年までに更に増加が予測される。心不全患者の生活指導に対する看護師の意識調査や、自己管理についての先行研究はあるが、心不全手帳を活用した指導の実態や看護師の認識についての研究はない。心不全手帳を活用した指導の医療従事者の認識と現状を明確にすることで、効果的な心不全手帳の活用の示唆を得たいと考えた。【目的】心不全患者に対して心不全手帳を活用した指導の認識と現状を明らかにする。【方法】自記式質問紙、聞き取り調査による横断研究。A病院の心不全患者用クリニカルパス(以下心不全パス)を入院時に使用する2部署の医療従事者に心不全手帳の認識や活用の現状を調査した。2部署を兼務している栄養士、薬剤師には聞き取り調査し単純集計した。本研究はA病院の生命倫理委員会の承認を受け実施した。【結果】質問紙は看護職65名に配布し、47名の回答(回収率72%)。聞き取り調査は、薬剤師3名、栄養士1名。看護師の心不全手帳の認識は全員あった。薬剤師は心不全手帳の認識はなく、栄養士は認識していた。薬剤師、栄養士共に心不全手帳の活用していなかった。「心不全手帳の導入のタイミング」については85.1%が迷っていた。「心不全手帳を導入できなかった患者」について95.7%が経験していた。心不全手帳を導入できなかった理由は、複数回答で「認知機能低下」が91.5%、「全身状態の悪化」が78.7%であった。心不全手帳を用いた指導は、「患者に合わせて内容を抜粋して説明」が63.8%、患者への心不全手帳での指導ができない場合は95.7%が「家族に指導する」をしていた。【考察】95.7%の看護職が心不全手帳を導入できなかった経験をしていた。心不全パスの指示に合わせて心不全手帳を導入しているが割合が低く、患者の状態をみながら導入している結果から、クリニカルパス内での患者の状態と導入のタイミングが合っていないことが推察された。心不全手帳の導入ができない患者の理由として「認知機能の低下」、「全身状態が悪化している」が全体の70%〜90%を占め、手帳内容を抜粋して説明した。さらに患者にできない場合は家族に説明する結果から、心不全手帳の内容が患者の認知力や病状等に合っていない事が推察された。心不全手帳の目的は、患者が自己管理し、医療従事者が患者の状態を把握しサポートしていくものである。今後、心不全患者の病態や年齢、生活背景など含め指導内容の検討や、医療従事者内で共有し活用できるように検討していく必要性が考えられた。【結論】高齢化してきている患者や家族の生活背景を考慮した心不全手帳の内容や、活用方法について検討していく必要性が示唆された。本研究は1施設での調査であり、他施設での心不全手帳の認識や活用の実態を調査していく必要がある。