[ポスター64-4] 水無脳症児へのアロマテラピーによる快刺激
ストレスを緩和し反応を引き出すケア
【背景】成長に伴い刺激反応性が乏しい傾向にある水無脳症児に、聴覚への介入や理学療法が既に報告されている。しかし今回、高いストレス状態にあった水無脳症児に一定の大脳形成があると仮定し、大脳辺縁系に伝導経路をもつ嗅覚・触覚へのアプローチの一つとしてアロマテラピーを試みたところ、良好な反応が得られたため実践を振り返り今後への示唆とする。【目的】意思疎通が困難な水無脳症児に対し、アロマテラピーによる嗅覚・触覚刺激が快刺激としての反応を引き出すのに有効であったケアと今後の課題を明らかにする。【実践内容・方法】事例紹介:女児A、4歳、受精後11週前後で脳血管障害を受けた可能性により、小脳の一部が存在し、最重度精神遅滞、痙性四肢麻痺を示していた。徐々に刺激反応性が乏しくなる中で不快反応が多く抱っこしても落ち着かないと保護者・保育士が感じていた。医療チーム内で保持している感覚機能についてアセスメントを行い、嗅覚・触覚に対する方法としてアロマテラピーを行った。第一段階はアロマテラピーで使用する精油の香り5種を用いて嗅覚刺激を行い、嗅覚機能の有無を確認した。第二段階は反応が良い香りを植物油で希釈し、嗅覚・触覚刺激の同時介入として四肢・体幹のマッサージを行った。刺激に対するストレス反応は唾液アミラーゼ活性の測定により評価した。本発表において、A病院倫理審査委員会の承認を得て、女児Aの保護者に学会で発表することを説明し同意を得た。【結果】介入前は唾液アミラーゼ活性が、「ストレスがややある」31~45KU/Lと高い状態が終日持続しており、さらに医療処置や食事、臥床後等の生活動作によって「ストレスがある~とてもある」46~70KU/Lまで上昇していた。まず女児Aが好んだ香りによる嗅覚刺激およびマッサージを行った結果、唾液アミラーゼ活性「ストレスなし」30KU/L以下が維持された。加えて穏やかな表情、四肢の脱力、バイタルサインの安定などリラックス状態が確認できた。さらには食事及び入眠の際の嗅覚刺激においても唾液アミラーゼ活性の低下や不快反応の減少を認めた。【考察】嗅覚伝導経路の大脳辺縁系は本能的な快・不快の判断により自律神経系、内分泌系、免疫系に関与する。よって、女児Aは嗅覚・触覚刺激が快刺激としてリラクゼーション効果をもたらすアロマテラピーにより、高ストレスの状態が緩和されたと考える。さらには、医療処置や食事、臥床後等の生活動作においても、嗅覚刺激はストレス増強の予防として機能した。【実践への示唆】意思疎通が困難な状態の児から表出される反応を丁寧に観察し、病態をふまえてアセスメントを行うことで、必要かつ有効なケアを計画することができる。アロマテラピーを用いた嗅覚・触覚刺激が、一定の大脳形成があると仮定した水無脳症児にとっても快刺激となり、ストレスが緩和されたことで疼痛・呼吸困難やこわばりの軽減につながる。