第55回(2024年度)日本看護学会学術集会

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ポスター

ポスター65群 意思決定支援③

Sun. Sep 29, 2024 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (展示ホール)

座長:塩田 美佐代

[ポスター65-2] 地域医療支援病院における病院職員のACPに対する認識

医療現場に従事する職員のアンケート調査から見えたこと

田沼 祐羽, 竹森 美佳, 稲垣 牧子 (東海中央病院)

【緒言】近年ACPの普及・啓発を進めているが、人生最終段階において、患者本人の意思決定が確認できず救急の場で心肺蘇生を実施する報告がある。そこで、ACP普及状況について地域の実態を知る前段階として、病院職員の認識調査を行った。【目的】A病院全職員に対し、ACPの認識を調査し課題を明らかにする。【方法】A病院全職員に対し、アンケート無記名方式。内容は厚生労働省「人生最終段階における医療に関する意識調査報告書」を参考に独自に作成。統計処理はEZRを使用。Kruskal-Wallis検定、Mann-WhitneyのU検定、統計的有意基準p<0.05とした。A病院の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号A-2023062201)。【結果】回答者数は470名で回答率は62.5%であった。(以下()は人数表記)職種別は医療職(338)、非医療職(132)で、年代別は29歳以下(86)、30-49歳(239)、50歳以上(145)であった。①認知度は、「知っている」医療職(181)、非医療職(6)で医療職が有意に高かった(P<0.05)。年齢別は29歳以下(45)、30-49歳(95)、50歳以上(47)。「知らない」は、医療職の46%(157)、非医療職の95%(126)であった。②認知のきっかけは、医療機関や研修会で、特に29歳以下では、学校が半数を占めた。③医療・ケアの希望は、医療職(224)、非医療職(56)、④希望の尊重は、医療職(110)非医療職(35)であった。③④ともに職種別では有意差があったが、年齢別で有意差はなかった。⑤ACPの実践状況は、「話し合ってない」が全体の60%で、理由は「きっかけがない」が最も多かった。「書面の作成」は全体の1.5%だった。ACPを充実させるために必要だと思うことは「相談体制の充実」「情報提供」「医療従事者への教育・研修」であった。【考察】非医療職に比べ医療職のACPの認知度が優位に高いのは、日々医療現場で人生最終段階の場面に遭遇する機会があるためと推測する。非医療職の95%、医療職の46%が認知していないのは、啓発方法や教育が不十分と考える。29歳以下の認知度が高かったのは、ACPが学校教育に取り入れられたことが要因と考える。ケアの希望は医療職・非医療職ともに認知度よりも高く、ACPという単語は浸透していないが、人生最終段階のイメージやケアの希望はあると読み取れた。しかし、希望の尊重が半数まで減少しているのは、ACPを実践していない事で、意思決定とまで至らないためと考える。実践にまで繋げることができない理由として、情報不足、縁起でもないという文化、家族形態の変化などの要因が重なり、「話し合っていない」という現状になっていると考える。【結論】A病院職員を対象に行った結果、ACPの認知度は低く、実践し書面に残しているのは回答者の1.5%であった。ACPの普及には病院からの情報発信の方法や、職員教育・研修を行い、患者・家族からの相談体制を整えることが課題である。